人に伝えるときは具体的に!「3分クッキング」の料理をおいしそうに見せる方法

思いや考えていることが「言葉」でうまく伝えられない――。そんな悩みを抱えるあなたのために、フリーアナウンサー・馬場典子さんの著書『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』(あさ出版)から、アナウンサーが実際に使っている「話し方のテクニック」を連載形式で紹介します。あなたの言葉と心が、もっと相手に伝わるようになりますよ。

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シズル感のある表現で五感に訴える

素晴らしい肖像画は「まるで息をしているかのよう」と言われたり、美しい風景写真は「光や風、匂いや音が感じられる」などと言われたりしますが、映像だけでなく、言葉にもそうした〝シズル感〟があります。

実況やリポートの研修で、色・音・香り・味・感触など、五感に訴える具体的な情報を入れるようにと教わりました。特にテレビでは伝えられない、香り・味・感触を意識するようにとも言われました。

たとえば『キユーピー3分クッキング』では、「色鮮やかですね」だけよりも「赤・緑・黄と、色とりどりで鮮やかですね」。

「いい香りですね」だけよりも「醤油の香ばしさが食欲をそそりますね」。

などと、聞き手に「食べてみたい」「作ってみたい」と思ってもらえるコメントを心がけてきました。

番組を引き継ぐとき、「一番心に残っているのは、目の見えない方から、『色や香りも伝えてくれるので、美味しそうな料理が目に浮かびます』というお手紙をいただいたことだったの」と話してくれた先輩の思いも、伝え方に彩りを添えてくれました。

たとえ話

研修では「たとえ」「比喩」の重要性も教わりました。

たとえ話には、

1. 多くの人が経験しているもの・知っているもので、共感を得る
2. 仕組みや本質、状態や状況が近いもので、理解しやすくする
3. 個人の知覚に差があるものを、より客観的・体感的に理解してもらう

などの効果があります。いわゆる「あるある」ネタもたとえの一種ですね。

友だち同士なら「すごかったの!」と言うだけでも、「クールなあなたがそんなに感動するなんて、本当にすごいんだね!」と伝わりますが、そうした関係にない相手にも、「何が、どう、どれだけ」すごいのかを理解してもらうためには、具体的なエピソードや数値・比較を用いることが効果的です。

よく使われる「東京ドーム○個分」というたとえにも理由があります。野球場は各地にあること、テレビでは観客も映されることから、大きさの目安になるのです。

私見ですが、たとえばディズニーランドなどは行ったことがある人にしか大きさが伝わりません。また、あまりに大きいものや広いものだと、人間の体感を超えてしまって比較の基準になりにくい。

反対に、学校にある25mプールなど小さいものは、1個の大きさの感覚はつかみやすいですが、数が多くなってしまいます。500個分も1000個分も、もはや体感と想像力の限界を超えてしまって、その違いが分かりにくくなります。

具体性のある言葉

嘘のような本当の話。上司から「このスーツ、急ぎでクリーニングに出してきてくれ」と言われた新入社員が、お店まで走って向かい、走って戻ってきたら、「馬鹿野郎、急ぎと言っただろう!」と怒られてしまったそう。どうやら、お急ぎコースで出せ、という意味だったようですが、新入社員、必死に走った挙げ句に怒られ損......。

感覚的な言葉・曖昧な表現を避け、より具体性のある言葉や数値に置き換えると、メッセージが明確に伝わります。

リハーサルで、「そこからもう一度返しましょう(やり直しましょう)」と言うディレクターさんがいます。ところが、そこが、照明なのか?音響なのか?コメントなのか?どこからなのか分かりません。

一方、伝える術に長けている方の場合、「◯ページのきっかけの音から」など、そこの代わりに、誰が聞いてもピンポイントで分かる言い方をします。何かの確認で一旦止まるときも、何のために時間を取るのか、待っている人たちにもきちんと情報共有してくれます。

我々アナウンサーも、たとえば方角や大きさなどをなるべく具体的に伝えるようにしています。「ご覧のように雲が広がっています」よりも「西の空から雲が広がってきています」と言うほうが、「こんなに分厚い本」よりも「800ページを超える本」と言うほうが、より具体的で、同じ秒数でも情報量が増えます。

映像が力を持つテレビの世界でも、「見れば分かる」より、「聞いただけでも分かる」を目指したほうが伝え手として親切なので、情報の質を高める工夫は欠かせません。

「言わなくても分かるだろう」「これで分かるだろう」は伝える側の思い込み。経験値も常識も、個人個人で異なります。具体性のある言葉で伝えると、そうした違いを乗り越え、共有しやすくなります。

キャッチボールが途切れたとき、相手の力量や状況を考えずに強く投げたほうの責任でしょうか、それとも上手に取れなかったほうの責任でしょうか。

上手くいったら「おかげさま」、上手くいかなかったら「お互いさま」、と笑い合える関係が私は好きです。

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021-shoei.jpg7章からなる本書では、著者がアナウンサー研修で実際に学んだトレーニングのほか、「話し方の心・技・体」という3つテーマで実践的な技術が学べます

 

馬場典子(ばば・のりこ)

1974年、東京都生まれ。フリーアナウンサー。1997年日本テレビ放送網株式会社にアナウンサーとして入社し、報道からバラエティ、スポーツまで幅広く番組を担当。2014年6月末に日本テレビを退社、フリーアナウンサーとして活躍中。2015年4月より大阪芸術大学放送学科アナウンスコースの教授を務める。

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『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』

(馬場典子/あさ出版)

思いや考えが言葉にするとうまく伝わらない――。そんな悩みを解決してくれるコミュニケーションスキルアップ本。言葉遣い、ニュアンス、間、表情などアナウンサーの「話し方」のテクニックを分かりやすく解説。なぜアナウンサーの言葉は伝わりやすいのか、その理由が必ずあなたに“伝わり”ます。

※この記事は『言葉の温度 話し方のプロが大切にしているたった1つのこと』(馬場典子/あさ出版)からの抜粋です。

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