「パパみたいな人はなかなかいない」。彼氏を作らない娘の言葉にホロリとする夫

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ちもて
性別:女
年齢:52
プロフィール:子育てはほぼ終了、勝手気ままに暮らしたい52歳。

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親の欲目かもしれませんが、顔も性格もそんなに悪くはないと思える娘は、20歳にして彼氏いない歴20年です。周りの友人は早ければ中学生のときから、遅くても大学生になるとどんどん彼氏ができています。なかには付き合っては別れ、別れては付き合いと、積極的な子もいます。娘はそんな友人たちの恋愛話をいろいろ話して聞かせてくれ、「〇〇ちゃんの彼はデートの間中ずっとカバン持ってくれるんだって」とか「△△ちゃんの彼は毎日朝起きてから寝るまで逐一LINEしてくるんだって」とか内容は様々なのですが、大抵否定的なことを言います。「カバン持ってくれるなんて優しいじゃない」と言うと「自分のカバンくらい自分で持つわ」。「1日中LINEしてくるのは好きだからでしょ。何してるのか気になってしょうがないんでしょ」と言うと「鬱陶しい、ずっと拘束されているみたいで息がつまる」と、けんもほろろです。
今までも娘のことを気にかけてそうな男子の話を何度か娘の口から聞きました。私は一切反対をすることはないのですが、娘はことごとく「うざい」「女々しい」と手厳しいのです。なかには良さそうな子もいるので、「付き合ってみたらいいところが見えてくるかもよ」と言ってもあまり興味を示しません。そこで「そんな贅沢言ってると一生彼氏できないよ」と言ってみたところ、「だってパパみたいな人、全然いないから。最近の若い子は優しすぎてつまらない。パパみたいに正しいことをはっきり言える子がいない」と言うので驚きました。周りの男子は娘に気を遣って優しくしてくれる子ばかりで面白くないそうなのです。

夫と娘は仲が悪いということはないのですが、何かにつけ上から目線で厳しい夫のことを娘は疎ましく思っていると感じていました。夫はいわゆる亭主関白で、あれこれ命令することが多く、いきなり怒鳴ったり、娘が小さい頃から「怖い父親」。夫のほうも、決して子どもに迎合するようなことはなく、嫌われてもなつかなくてもいいから言うべきことは言う、という昭和の頑固爺さんのようにしつけてきました。反抗期らしきものもなかったのですが、反抗すると余計怒鳴られて面倒だから反抗しないのかも、と考えていた私。娘にとって夫は怖くて面倒な存在なのでは、と思っていたので、娘の言葉はかなりの驚きでした。しかも、「ママはパパみたいな人と結婚できて幸せだね。毎日昼寝できるし。私もパパみたいな人と結婚してママみたいに暮らしたい」と言うのです。いや、昼寝しているのは事実だけれど、娘の目に幸せそうに映っていたとは初耳でした。

そのことを夫に言うと夫も驚きを隠せないようで、「嫌われててもおかしくないと思っていたけどな」。そして「厳しくしつけたのは間違ってなかったな」とまんざらでもない様子で嬉しそうでした。

その後もことあるごとに思い出すのか、「〇〇(娘のこと)はまだ彼氏できないのか」と以前は全く聞かなかったことを聞くようになり、「まだみたいよ」と言うと「そうか、そうか」とどこか嬉しそう。「一生できなかったらどうするのよ」と咎める私の言葉もスルーする夫の横顔を見ていると、この人も年取ったなあ......となぜかほっこりするのでした。

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