圧倒的な居心地のよさ!平均年齢70歳の「メイド喫茶」訪問記

GWを目前にした神奈川県鎌倉市。今回「毎日が発見ネット」編集部は、ある情報をもとに鎌倉駅から5分ほどのカフェを訪れました。

蔵を改装した、落ち着いた建物の扉を開けると「お帰りなさい」と、丁寧なお出迎え。一見すると普通のオシャレなカフェですが、店内をのぞくと......上品な"おばあちゃん"や"おじいちゃん"が、白シャツに蝶ネクタイ、黒や白のフリルのエプロン姿で接客しています。

実はここ、3日間限定で開かれた、スタッフの平均年齢70歳の"メイド喫茶"なんです。

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取材当日の午前は4人のメイドさんが大活躍。笑顔が素敵です

提供するのは、シニア世代ならではの"スキル"

開催されたのは4月23~25日の3日間。高齢者支援事業を行っている株式会社ぴんぴんころりが「シニアの魅力を伝えるために」と、地元・鎌倉市のシニアの雇用促進事業「セカンドライフかまくら」とが共同で開催したイベントです。

地元の人気店「カフェ&ギャラリーtsuu」をイベントスペースとして借り、期間中は「めいど喫茶ぴんころ」として、60歳以上のメイドと執事が、喫茶メニュー以外にそれぞれの得意な「スキル」でおもてなししてくれるという趣向。茶の湯、刺繍、朗読、観光案内、人生相談...。メイドさん、執事さんの人生経験を表すかのような、豊富なメニューが並びます。

shitsuji_DSC_0275-thumb-autox669-25811.jpgもちろんダンディな執事もいます

たとえば、鎌倉で生まれ育った鵜飼さん(69歳)が提供するのは、地元住民ならではの秘話を加えた鎌倉の観光案内。「あのお寺はあじさいで有名だけれど、春の花もきれいなのよ」という穴場の話もあれば、「あそこの土地は戦国時代に合戦が行われた場所で、ビルを建てる時に土の中からたくさん亡骸が出てきたのよ」なんてびっくりヒストリーも!「ガイドブックにはない話が聞けるのが魅力ですよね。特に鎌倉の土地の"気"の話が面白かった」と、戸塚市在住の女性客(65歳)。

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地元住人ならではの観光案内で楽しませてくれた鵜飼さん(右)とお客さん

 「自分の趣味がこんなに人に喜んでもらえるなんて」と自分のメイド力(?)に驚いていたのは、刺繍をスキルとして提供する岩本さん(72歳)。保育園児が自分の名前を書いたものを刺しゅうしたんですけど、「の」の字が裏返っていて(笑)。でもかわいいからそのまま刺しゅうしたら、お母さんもお子さんもとっても喜んでくださって」と満面の笑みです。

DSC_0268-thumb-420xauto-25813.jpg刺しゅうの細かな作業もお手のものです

3日間のイベントには、下は60歳から、上は77歳まで、総勢15名のメイド・執事が参加。以下の提供されたスキルを見れば、シニア世代が秘めるパワーの一端が見えてきます。

 

イベントで提供されたスキル
刺しゅう、茶の湯体験、鎌倉観光案内、温泉・登山紹介、朗読、子育て相談、サイフォンで淹れるコーヒー、介護・障害お悩み相談、アレルギーメニュー提案、海外赴任体験紹介、お料理レシピ提案、ビジネスお悩み相談

DSC_0231-thumb-560xauto-25824.jpgテーブルにはメイドさんたちが手書きしたメッセージ入りのランチョンマットが

シニア自身が「自分の価値」を再発見!

しかしこのイベントに参加するまで、メイドや執事の皆さんには「お客様に提供できるスキルなんて、自分にあるのかしら...?」という、戸惑いもあったそう。

イベントを主宰したぴんぴんころりは、メイドや執事を募集する説明会で、一人ひとりの得意分野を細かく聞き取りしました。

「みなさん初めは、何ができるか分からないと、ご自身がこれまでの経験で培われたことが"スキル"だと思っていらっしゃらないんです。でも聞けば刺しゅうを30年もやっていらっしゃるという。それはもうセミプロの域ですよね。海外赴任が長かった方には、そこでの経験を話すことを提案したり、演劇経験のある方には絵本の朗読を提案したり。すると、なるほど!となるんです」と、ぴんぴんころりの代表・小日向えりさん。


DSC_0247-thumb-autox464-25820.jpg2017年に設立した株式会社ぴんぴんころりの代表取締役・小日向えりさん。「歴ドル」(歴史好きのアイドル)として活躍するタレントでもあります

そもそもこのイベントは、ぴんぴんころりが行っている、母親目線のライフサポート「東京かあさん」という事業がきっかけ。60代以上の女性が所属し、熟練主婦の経験と知恵で利用者に寄り添った家事手伝いや人生相談などを提供。利用者に「東京にもう一人のお母さんがいる」ような安心した生活を送ってもらうというビジョンを持ったサービスです。

「私はもともと"おばあちゃん子"だったんです。その祖母は80歳まで働いていたんですが、仕事をやめた途端に元気がなくなってしまって。それをきっかけに、シニア世代が好きなことで働くためのサポートができないかと考え、形にしました」という小日向さん。

「この『東京かあさん』は一般的な家事代行と異なり、ご利用者の方々にはシニア世代との交流を楽しんでもらうというコンセプト。でもこの"シニア世代との交流"という部分の魅力はなかなか理解していただけないんです。だから今回のカフェは、知識も経験も豊富なシニアの魅力をダイレクトに伝えたい!と企画したんです」

DSC_0265-thumb-560xauto-25822.jpg開店直後から盛況でした

その想いに応えるかのように、このカフェには30代の男性、幼児を連れたお母さん、同じシニア世代のご夫婦など幅広い客層が来店。人生の先輩方に自分にはないスキルを提供してもらうことで、来店客が喜ぶのはもちろん、当初は半信半疑で参加したメイドさんたちにとっても、自分自身の価値を再発見する場になっていたのが、同イベントの魅力なのかもしれません。

平均年齢70歳のメイドさんと執事たち。みんな笑顔で接客し、慣れない注文取りや配膳も積極的に立ち回る姿には、自分の価値を見出した人ならではの凛としたパワーがあふれていました。

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本誌『毎日が発見』を持ってもらってパチリ!

 

撮影・取材・文=ほなみかおり

 

 

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