「血圧・血糖値・コレステロール値」は気にしなくていい!?「医者の正義」にあらがうベストな生き方

「アメリカの真似」が理不尽を招いている

口うるさく血圧・血糖値・コレステロール値を「下げろ、下げろ」と言われるのは、そもそもなぜでしょうか。

それは、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリスクを減らすため、ということになるでしょう。

しかし、残念ながら、血圧・血糖値・コレステロール値が全部正常でも、心筋梗塞で亡くなる人は存在します。

さらに言えば、医者に言われた通り、真面目(まじめ)に薬を飲んで、食べたいものを我慢する生活を続けた人が、ストレスで免疫機能が落ちてがんになることが、かえって多くなるかもしれません。

日本人の死因のトップは、心筋梗塞でも脳梗塞でもなく、がんであることも、見落とされやすいポイントです。2022年の「人口動態統計」によると、約157万人の死亡数のうち約40万人ががんで亡くなっている一方、心疾患のなかでも急性心筋梗塞に限れば、その死亡数は約3万人です。それにもかかわらず、健康指導では「血圧・血糖値・コレステロール値」が一番うるさく指摘されます。

これは、日本の医療が、アメリカの医療を見習っているからです。アメリカでは、死因の第1位は心疾患です。ですから、「心疾患を防ぐためにコレステロール値を下げましょう。そのために肉を食べる量を控えましょう」という警告は、アメリカならば理にかなっています。しかし、それをそのまま日本に当てはめるのは、いささか乱暴です。

この「猿真似(さるまね)」が本格化したのは1980年代からです。当時、アメリカでは、心筋梗塞を減らすために「肉の摂取を控えよう」という運動が盛んでした。日本の医学界は、これを踏襲(とうしゅう)したのです。

しかし当時、アメリカ人の1日の肉の摂取量は平均300gだったのに対し、日本ではわずか70gでした。同時期、平均100gを摂取していた沖縄県民のほうが日本全体よりも平均寿命がはるかに長かったという事実も検討されずじまいでした。

高血圧や高血糖、高コレステロールは本当に悪か?

健康診断の基準値は一律の型にはまりすぎていて、重視される指標も日本に合ったものではない、となると、それに振り回されるのは馬鹿馬鹿しいのではないでしょうか。

食べたいものも食べず、お酒を我慢する人生を快適とは感じないでしょう。これからの30年、40年、その不快とともに生きて、楽しいでしょうか?

世間で悪者扱いされる高血圧・高血糖・高コレステロールは、活力につながるものでもあります。

低血圧になると、だるさを感じます。低血糖のときも、眠気や倦怠感(けんたいかん)が起こります。また、コレステロール値が低い人は、男性ホルモンが減り、免疫力も低くなり、やはりだるさを感じます。

数値を下げるという「医者の正義」に従っていても、自分の感覚として元気ではないのなら、健康とはとうてい言えないでしょう。

<POINT>
コレステロール値が重視されるのは、アメリカの医療を真似ただけ。

 

和田秀樹
精神科医。1960年、大阪府生まれ。1985年に東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、国立水戸病院、浴風会病院精神科、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授。映画監督としても活躍している。1987年のベストセラー『受験は要領』以降、精神医学・心理学・受験関連の著書多。近著に『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(ともにPHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『60歳からはやりたい放題』『60歳からはやりたい放題[実践編]』(ともに扶桑社新書)などがある。

※本記事は和田秀樹著の書籍『60歳からは、「これ」しかやらない 老後不安がたちまち消える「我慢しない生き方」』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。
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