新幹線駅の片側だけ発展している理由は? 「街の歴史」と「お金の都合」から分かる共通点

駅は市街地の中心には作らない

"なぜ新幹線の駅は片側だけ発展しているのか?"もちろん都市計画で開発の順番が決まっているということもありますが、理由はそもそも駅を作った当初から片側は多少発展していたからです。当たり前ですが、鉄道や新幹線を街の中心に通すと用地買収コストが莫大になりますし地権者の人数も増えるため、手間も時間も掛かります。2010年に新幹線が開通した新青森駅は周辺には病院とホテルが1軒ずつでき、多少住宅も増えてきましたが、それ以外はレンタカー会社しかありません。元々周辺には何もないところでした。

ちなみにかつて東京の中心は五街道(東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道)の起点であった日本橋周辺で、東京駅のある丸の内周辺は江戸時代には各藩の大名屋敷が立ち並んでいました。
明治維新後に諸藩の江戸詰めがなくなりその跡地が陸軍の施設として利用され、その後、新橋駅と上野駅を結ぶ中央停車場として建設されたのが東京駅の始まりです。大阪駅にしても当初の候補地は堂島でしたが、用地買収コストを抑えるために数軒の民家しかない田園地帯だった梅田周辺に建設されました。

駅前発展のライフサイクル

元々の市街地の端に駅を作り、市街地側が発展していくのが一般的なようです。多くの場合、市役所や城、有名な神社があるエリアがかつての街の中心なので、発展している側にそのような施設が集中しています。その後、元々の市街地側で開発の余地が無くなってくると反対側も開発されるようになります。歴史が古い駅などはそのような変遷を経て全体的に発展していますが、開発された時期の違いから旧市街と新市街のような色合いが出ます。

都心で新しい線を通すとなると莫大な費用が発生します。東京メトロが副都心線池袋―渋谷間8.9kmを建設する際に購入した1㎡当たりの用地購入費は203万円でした。地下鉄を通す際は地上の地権者との用地交渉や補償の問題が発生するため、基本的には国や地方自治体が所有する道路の下に作りますが、それでも地下鉄の駅の出入り口などある程度の用地買収は必要になります。東京駅と有明・東京ビッグサイト駅間で建設が予定されている都心部・臨海地域地下鉄、通称・臨海地下鉄新線では約6.1kmの路線を作るのに、建設費は約4200億~約5100億円。1km当たりの建設費は689億~836億円に達します。

このように鉄道を通すというのは本当にお金が掛かります。そのために市街地の端に駅を作り、元々の市街地側が発展したわけです。

新幹線駅の片側だけ発展している理由は? 「街の歴史」と「お金の都合」から分かる共通点 dai_conveni03_zu.jpgイラスト/春仲萌絵

 

平野薫
1978年宮城県大崎市生まれ。宇都宮大学農学部卒業後、キユーピー、帝国データバンクを経て、現在、小宮コンサルタンツでコンサルタントチームリーダー、エグゼクティブコンサルタントを務める。
帝国データバンク調査員時代を含めこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施。苦手意識を持つ人が多い「会計」を、豊富な事例と分かりやすい言葉で教えてくれると評判を博している。国内外107の経済指標を5年以上毎月更新。経済指標と実体経済を照らしあわせて説明する経済解説に定評がある。現在も16社の企業の経営会議に参加して業績数字のチェックも行っている。数字の羅列の中から変数を見出し、会社の問題点や予期せぬ成功を発見し、経営のアドバイスを実施している。

※本記事は平野薫著の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』(ダイヤモンド社)から一部抜粋・編集しました。
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