「ひと手間を楽しむ晩ごはん」の魅力/95歳の料理研究家・鈴木登紀子さんの食卓

腸内で有用な働きをする「発酵食品」を積極的に食べて健康長寿を目指すため、95歳の料理研究家「ばぁば」こと、鈴木登紀子さんのご自宅に伺い、「夕食」を見せていただきました。

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食事の最後にはお漬物を。日本の味を守りたいですね

「夕食には、旬のものをたっぷりいただきたいですね。春のご馳走といえば、はまぐりのうしお汁や金目鯛のさっと煮。こうしたご馳走を引き立て、栄養バランスも考えて和食の最初に出されるのが、おひたし、あえ物、酢の物です。これらは、いわば日本のサラダ。発酵食品のうま味を生かしたあえ衣や合わせ酢は、和風ドレッシングです。だし汁やあえ衣を作り置きしておけば、簡単においしい一品が作れますよ」

まず、教えていただいたのは、ほうれん草のおひたし。

「おひたしは、しょうゆに浸すから。おひたし々だと思っている人がいますが、だし割りじょうゆに浸すからなのよ」と、ばぁば。

作りやすい分量は、ほうれん草1束(約300g)に対し、だし汁1カップ、薄口しょうゆ大さじ2。

バットにだし汁、しょうゆを入れて混ぜ、その中に、ゆでてから冷水に放ち、ふきんに包んで水けをきったほうれん草を浸して平らに広げます。

バットごと冷蔵庫に入れて冷やしてから器に盛り、削りがつおをたっぷりと。とても簡単ですが、一味違う、おひたしです。

「おだしをきちんと取っているから、味が決まるのね。まぐろとわけぎのぬたも、練りみそを作っておけば、簡単。密閉容器に入れれば、冷蔵庫で2ヵ月は保存できます。まぐろは、角切りにしたら。しょうゆ洗い々をすると、下味がついて味がぼやけません。わけぎはさっと湯がいてから冷まし、ぬめりを取ること。こうしたひと手間が大切よ」

そして、ばぁばが一日の食事の締めくくりにいただくというのが、日本の発酵食品の代表選手、お漬物。

「私が育った青森の実家には、家の外に漬物小屋があり、樽を並べてさまざまな野菜を漬けていました。食事の最後にご飯と一緒にいただくのが、お漬物。そして食後には、家族みんなでお漬物を食べながら、熱いほうじ茶を飲んだものです。お漬物は野菜をおいしく、栄養価をたっぷり残した状態でいただくための、先人の知恵。これからも大切に残していきたいですね」

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ご飯のお供は漬物。

「栄養豊富で食物繊維が多いご飯は、日本人の元気の素。1日一回はいただきます。やはり3色のバランスが大切ね」というばぁば。

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ご飯を炊くのは文化鍋。

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「手間をかけて、いつもよりご馳走が作れるのが夕食です。おいしいおだしがあれば、きっと作るのが楽しくなりますよ」

ひと手間を楽しむ

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金目鯛のさっと煮は、煮汁を皮目に4~5回かけてふっくらと仕上げます。

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ぬたに使うまぐろには、しょうゆ洗いを。

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ぬたに使う練りみそは、小鍋に西京みそ1/2カップと砂糖大さじ2を入れてよく混ぜ、次にみりん1/2カップを3回に分けて混ぜ、弱火で練り、鍋底に道ができたら完成。

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ぬたの合わせ衣は、練りみそ大さじ4、酢大さじ2、溶きがらし大さじ1/2で作ります。

取材・文/丸山佳子 撮影/工藤雅夫

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<教えてくれた人>

鈴木登紀子(すずき・ときこ)さん

日本料理研究家。1924年、青森県八戸生まれ。自宅で始めた料理教室をきっかけに、46歳で料理研究家に。 NHK 「きょうの料理」に40年以上出演。近著に『ばぁばの100年レシピ』(文化出版局)がある。

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この記事は『毎日が発見』2020年3月号に掲載の情報です。

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