相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。
健康的な暮らしを送りたい 高齢者を守る医療に関する法律
世界最速で高齢社会に突入した日本。
以前の「老人保健法」が、平成20年に「高齢者の医療の確保に関する法律」に改正され、「後期高齢者医療制度」になりました。
【この条文】
高齢者の医療の確保に関する法律 第1条(目的)
この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成および保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もって国民保健の向上および高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする。
高齢者の医療の確保に関する法律 第47条(後期高齢者医療)
後期高齢者医療は、高齢者の疾病、負傷、または死亡に関して必要な給付を行うものとする。
制度の対象者は?
加齢や障害によって、またその人の所得によって医療の求め方も違います。
高齢者全体に目配りしつつ、その人に合った医療となるように、制度が再設計されました。
・75歳以上の人......75歳の誕生日当日に資格を取得します。届け出は不要です。自動的に対象になります。
・65歳以上75歳未満の一定の障害者......障害の認定の申請をして認められれば、対象になります。
公的医療保険は、「被用者保険」(会社等の勤め人が加入)や「国民健康保険」(地域保険とも呼ばれ農家、自営業者、非正規雇用者、会社の退職者等が加入)などがありますが、年齢・障害等の前述2つの区切りによって、高齢者・障害者はこの制度に一本化されます。
支払う保険料の金額は?
保険料は、条例により後期高齢者医療広域連合が決定し、毎年度、個人単位で賦課されます。
2年ごとに保険料率が改定されます。
保険料額は、①被保険者全員が負担する均等割と、②所得に応じて負担する所得割の2つで構成されています。
なお、所得が低い人は、世帯(被保険者全員と世帯主)の所得に応じて、保険料の均等割額の軽減措置があります。
自己負担の割合は?
医療機関等の窓口での支払いは、同じ世帯の被保険者全員の所得がいずれも145万円未満の場合、一般的には医療費等の1割です。
ただし、住民税課税所得が145万円以上であっても、一定の要件に該当し、「基準収入額適用申請」をして認められると、1割負担になります。
市区町村の窓口に確認しておきましょう。
また、現役並み所得の人は3割となります。
同じ世帯の被保険者の中に住民税課税所得が145万円以上の人がいる場合も同様です。
毎年8月1日現在の世帯状況と前年度の所得に基づいて判定されます。
介護保険法の制定
平成12年4月、「国民の共同連帯の理念」に基づき、新たな社会保険として介護保険法が施行されて、制度が創設されました。
「介護の社会化」を大きな旗印として国民全体で支え合うのです。
介護保険は市区町村が保険者となり、制度の運営を行います。
40歳以上の国民が被保険者となり、40歳から介護保険料の支払いを開始します。
費用を国民全体で支払い、必要とする人に支出して支える保険システムなのです。
法は、介護される人の人権・尊厳を守り、その人の能力に応じて自立した日常生活を営むために、介護される人が主体性を持って選択した保険給付を行うことなどを決めることを目的としています。
近年、核家族が増え、「一人暮らし」「夫婦二人暮らし」の高齢者世帯が全体の過半数以上となっています。
今後、「老老介護」(65歳以上の高齢者同士の介護状態)や「認認介護」(認知症の人同士の介護状態)の世帯が増え、事故が起きやすい趨勢です。
介護をする人が疲れきらないように、また介護で共倒れにならないように、対応策を講じていくことが我が国の大きな課題となっています。
【その他の条文】
介護保険法 第1条(目的)
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護および療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上および福祉の増進を図ることを目的とする。
ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。