認知症などで「親の判断力」が衰えたら...。弁護士が教える「成年後見制度」/シニア六法(6)

相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。

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信頼できる人に判断を任せる「成年後見制度」

高齢者や障害のある人を守るための「成年後見制度」。

認知症などで判断力が衰えると、騙されたり、不要な契約を結んだりするおそれがあり、いざ高齢者施設に入るときに必要な手続きができなくなるおそれもあります。

そのために、財産関係について本人に代わって管理や処分をする代理人が後見人です。

家族が選ばれることもありますが、専門家が選任されることもあります。


【この条文】
民法 第7条(成年後見開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族等の請求により、後見開始の審判をすることができる。


精神上の障害により判断能力が不十分な成人(本人)を保護するために、「後見」という制度があります。

後見は、後見人を家庭裁判所が選ぶか、本人が決めておくかによって「法定後見」と「任意後見」に分かれています。

最も利用されているのは、「法定後見」です。

「成年後見」というときには、これを指す場合が大多数でしょう。

また、判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の類型が定められています。

法定後見

裁判所が本人を援助してくれる人を決め、その人が本人のために活動するという制度です。

法律上の代理人です。

任意後見

本人の判断能力が十分なうちに、将来に備えてあらかじめ自分の後見人になる人を決めて、公正証書によって「任意後見契約」を結びます。

そして、実際に判断能力が低下してきた段階で、家庭裁判所に後見監督人を選んでもらい、その監督の下で任意後見人が本人を援助し、法律上の代理をしていくことになります。

成年後見を申し立てるには

住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。

事前に家事相談窓口で相談しておきましょう。

無料です。

診断書を含めた必要書類が全部揃っており、特に問題もなければ、申し立てから審判までの期間は1〜2カ月程度です。

申し立て時にかかる費用、後見人への報酬の目安

申し立て時に、裁判所に納める印紙や切手など数千円が必要です。

医師による精神鑑定が必要な場合は、鑑定費用が10万円前後かかるでしょう。

後見人の報酬額は、家庭裁判所が個別に決定します。

社会福祉士、司法書士、弁護士、税理士などの専門家が後見人である場合には、本人の財産の金額に応じて月額2〜6万円が目安です。

親族が後見人である場合もこれに準じますが、本来本人を扶養する義務のある親族の場合はそれより低額になるでしょうし、無報酬のときもあります。

後見人に選ばれる人とは?

本人の親族が選ばれる場合もあれば、専門家が選ばれる場合もあります。

申し立ての際に後見人候補者を指名することもできますが、必ずしも家庭裁判所がその人を選ぶとは限りません。

次のような場合には、親族を後見人候補者にして申し立てをしても、別の専門家が選ばれることもあります。

・ 本人の身上保護や財産管理について、親族間に意見の対立や葛藤がある

・ 本人の財産が高額かつ多岐にわたるものであり、専門家による管理がふさわしい

・ 遺産分割協議をしなければならないなど親族と本人との間に利益相反関係がある

・ 親族である後見人候補者が生活に困っており、本人の財産を当てにしている

成年後見人の事務の内容

財産関係が主になります。

まず、財産目録や年間収支予定表を作り、収支を記録して家庭裁判所に報告します。

必要なら、財産を売って処分するなど、本人の代理人として法的な行為をします。

身上保護については、医療・介護サービスの利用契約や病院・施設への入院入所契約を本人の代理人としてすることがあります。

しかしあくまでも法律・財産関係の代理であり、身の回りの世話や介護関係は事務の内容には入りません。

本人の判断能力が回復しない限り、亡くなるまで続きます。

途中でやめることはできません。

申し立てをするかどうかは慎重に考える必要がありますが、「高齢者施設に入所したい」「資産を売却して現金を用意したい」などの契約をするうえで、必要に迫られる場合もあります。

今後を見据えて期を逸しないことも重要です。

後見に該当するほど判断能力が低くない場合につく「保佐」・「補助」

「成年後見制度」は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」という類型が定められています。

いずれの類型に該当するかは、主治医の医学的な判断を参考に、最終的に家庭裁判所が決定します。

この3つの違いを比較してみましょう。

・ 後見......重い認知症などで、判断能力はまず認められないケース。日常生活の買い物以外のすべての行為を成年後見人が代行する。日常生活の買い物以外の契約に、取消権がある

・ 保佐......判断能力にやや欠ける程度。同意権・取消権がある。一部の行為については、保佐人に代理権の付与も可能

・ 補助......判断能力にやや心配な部分ある程度。限定的な同意権・取消権がある。一部の行為については、補助人に代理権の付与も可能

いずれも、家庭裁判所の審判において、判断能力に関する医師の意見を参考に決定されます。

「代理権」や「同意権」などの内容についても決定されます。

なお、「代理権」「代表権」とは、家の売買契約や預貯金の解約など財産に関わる重要な行為を本人に代わって行う権限です。

「同意権」とは、家の売買契約や預貯金の解約など財産に関わる重要な法律行為を本人が行う際は、代理人の同意を必要とする権限です。

「取消権」とは、本人が代理人の同意を得ずに行った契約や取引などを、後で取り消す権限です。

共通することは、すべてに取消権が認められていること、取引の相手方に催告権(契約を取り消すかどうかを催促して確認すること)が認められていること、行為能力に制限があるのに「ない」と嘘をついて取引したときは、その取引を取り消せないことです。

成年後見制度は本人の保護のための制度です。

今後、高齢化の進展に伴い、活用が拡がることを期待しましょう。


ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。

【まとめ読み】『シニア六法』記事リスト

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住田裕子(すみた・ひろこ)
弁護士(第一東京弁護士会)。東京大学法学部卒業。現在、内閣府・総務省・防衛省等の審議会会長等。NPO法人長寿安心会代表理事。

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『シニア六法』

(住田裕子/KADOKAWA)

シニア世代にとって「老・病・死」は身近なものですが、そのうえで健康を維持し、トラブルをなるべく避けて穏やかに過ごしたいと望む方が多いと思います。介護トラブルやオレオレ詐欺に遭ったときの正しい対処法など、「老・病・死」に近づいたときのリスクと対応策が、とっても分かりやすく解説されています。法律を軸にパラパラとめくって、フンフンと頷ける…とっても「ためになる」一冊です!

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※この記事は『シニア六法』(住田裕子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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