後見人が勝手に財産を使い込んで...!? 住田裕子弁護士が解説する「成年後見制度のリスク」/シニア六法(7)

相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。

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成年後見制度のリスク「財産の使い込み」

「後見人が財産を使い込んで横領してしまった」というニュース報道がときどきあります。

成年後見人をつけることによって、逆にトラブルや不都合になることはあるでしょうか?


【この条文】
刑法 第253条(業務上横領罪)

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。


そもそも後見人をつける必要のないケースも多い

身近な親族に支えてもらうことによって、財産管理や身上保護に事実上支障が出ていなければ、わざわざ成年後見制度を利用する必要はないかもしれません。

また、銀行の口座名義人本人が認知症になり、預金の払い戻しを受けようとする場合、銀行は、本人の意思確認が原則であるとしつつも、それができない場合には、①家族関係が確認できる戸籍抄本、②使途として、施設や医療機関等の請求書などを提出すれば、本人に代わって家族が払い戻しを受けることができます。

事前にどんな書類が必要かを銀行に問い合わせておきましょう。

十分な現金・預金があるときは、成年後見人の必要性は低いでしょう。

業務上横領防止の「後見制度支援信託」

後見人が本人の財産を使い込むのは、「成年後見人」という役職を利用した横領行為です。

「業務上横領罪」に当たります。

このような被害の防止のために、多額の資産があるなら「後見制度支援信託」を利用しましょう。

被後見人の財産のうち日常生活に必要な分だけを後見人が管理し、残りの財産については信託銀行等に預ける制度です。

信託銀行に預けたお金の払い戻し、契約の解除には裁判所が発行した指示書が必要となるため、後見人が勝手に財産を使い込むといった心配はなくなります。

また預けたお金は元本保証されているので、元本割れの心配もありません。

その他のトラブルや不都合

後見人が付くことで本人や親族にとって不便が生じる面もあります。

例えば、本人なら当然に手にしていたであろう贅沢品を買いにくくなりますし、親族にお金や物を贈ることにも限度が生じます。

特に、投資をして財産を運用する、相続税対策のために資産の組み換え(不動産の売買等)をするなどは、法定後見人にはまずできません。

後見人は常に、「その必要があるか」「浪費ではないか」という観点から家庭裁判所にチェックされることになるからです。

ところで、本人の資産を増大させるために、親族に対する訴訟を積極的に仕掛ける専門家の後見人もごくごく稀ではありますがいます。

例えば、本人の身上保護をしてくれている同居の親族に対して、それまで当事者双方とも問題視してこなかったような貸金、立替金等の金銭請求をしたり、ひどいものでは賃料請求や建物明け渡しを求めたりするケースも散見されました。

後見人は、経済合理性のみならず、本人と周囲との人間関係に無用な摩擦を生じるようなことは避けるべきでしょう。

任意後見契約の活用と後見人候補者の指名

親族と後見人が二人三脚で後見開始後の本人の生活を支えていくためには、本人や親族が信頼できる人を確保することが望まれます。

そしてその人との間に任意後見契約を結んでおき、後見人候補者とは本人が自分らしい老後を送れるようにいろいろと話し合って契約内容を決めておきましょう。


ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。

【まとめ読み】『シニア六法』記事リスト

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住田裕子(すみた・ひろこ)
弁護士(第一東京弁護士会)。東京大学法学部卒業。現在、内閣府・総務省・防衛省等の審議会会長等。NPO法人長寿安心会代表理事。

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『シニア六法』

(住田裕子/KADOKAWA)

シニア世代にとって「老・病・死」は身近なものですが、そのうえで健康を維持し、トラブルをなるべく避けて穏やかに過ごしたいと望む方が多いと思います。介護トラブルやオレオレ詐欺に遭ったときの正しい対処法など、「老・病・死」に近づいたときのリスクと対応策が、とっても分かりやすく解説されています。法律を軸にパラパラとめくって、フンフンと頷ける…とっても「ためになる」一冊です!

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※この記事は『シニア六法』(住田裕子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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