【おかえりモネ】「やってもできない」と開き直り! 人生100年時代、よちよち歩きのヒロイン像/6週目

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』で描かれる人生100年時代のヒロイン像」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】【おかえりモネ】疑問をぶつけて勉強する百音。この朝ドラが「家族で観るドラマ」である理由/5週目

【最初から読む】『おかえりモネ』は異例のスタート? 朝ドラの"重要な2週間"に思うこと/おかえりモネ1~2週目

【おかえりモネ】「やってもできない」と開き直り! 人生100年時代、よちよち歩きのヒロイン像/6週目 メイン写真.jpg

清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第6週のサブタイトルは「大人たちの青春」。

今回は百音(清原)の父・耕治と旧知の仲である田中(塚本晋也)が肺がんで診療所に通いっていることから、百音との交流が始まり父と母の出会いや青春が明らかになる。

ここまで父・耕治(内野聖陽)が銀行員にしてはずいぶんとカジュアルというか、ラフだなあと思っていた人もいるだろう。

しかし、田中が語るトランペット奏者だった過去の耕治はそれどころじゃなく、ムキムキのタンクトップにチリチリのロングヘアというぶっ飛びぶり。

なんとなく既視感のあるビジュアルだと思ったら、放送直後の『あさイチ』(NHK総合)の受けでMCの博多大吉が「シルベスター・スタローン」と言っていた。

そう、それだ!

二人の交際は、意外にも母・亜哉子が耕治にゾッコンで、耕治のほうは当初は素っ気なかったものの、後に大逆転を果たすという。

今の両親を見ているとあまり想像がつかない。

交際後あるいは結婚後に力関係が変わっていくのも、あるあるだ。

それにしても、両親の馴れ初めに対する娘たちの「知りたいけど、知りたくない」気持ちや、「何がコージーだよ!(笑)」「ださいよね(笑)」と盛り上がる様は、今週で一番のリアルに思える。

おそらく親のことは全く知らなくとも、この姉妹のリアクションを見るだけで、父と娘の距離の近さや家族仲の良さが見えてくるだろう。

その一方、百音は診療所の医師・菅波(坂口健太郎)に気象予報士試験の勉強を教えてもらいつつ、すぐに気持ちが切れては、「やってもできない人の気持ちは先生にはわからないですよ。挫折とかしたことなさそうですもん」と開き直る。

残念ながら、こういうことを簡単に口に出す人の「やってもできない」は、「挫折を知らない」と言われる人の10分の1も「実際にはやっていない」ことが多い気がする。

菅波の抱えている本当の挫折は、おそらくずっと根が深い。

さらに勉強にずっと付き合ってもらいながらも、試験当日朝の菅波の長文メールを鬱陶しがり、試験が終わってからもまともにお礼も言わない百音。

勉強においても、人間的にも、まだよちよち歩きだ。

しかし、人生100年時代のヒロインは、ゆっくりで良いのだろう。

と同時に、余裕に見える大人だって迷うし、間違えることに気づかされる。

様々な視点からの寛容さが問われる第6週だった。

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文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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