【おかえりモネ】最小限のセリフとBGM..."余白"が想像させた百音と取り巻く人々の「喪失感」/3週目

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』で描かれている"喪失感"」について。あなたはどのように観ましたか?

【前回】『おかえりモネ』は異例のスタート? 朝ドラの"重要な2週間"に思うこと/おかえりモネ1~2週目

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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第三週では、ヒロイン・永浦百音(清原)の「島を出たかった理由」が明かされる。

前半では、百音と妹・未知(蒔田彩珠)の祖母の初盆で、同級生・明日美(恒松祐里)、亮(永瀬廉)、悠人(高田彪我)、三生(前田航基)が再会。

ゆったりとした時間が流れる中、亮の父親(浅野忠信)の変わり果てた姿がチラリとはさみこまれたり、現在はチャラい亮が中学時代は真面目だった様子がわかったり、幼い頃から寺を継ぐと言っていた三生が金髪のバンドマンに変わっていたりと、百音以外の人々もそれぞれに何か背負っていそうな様子が見えてくる。

いろんな人の中に「喪失」がある。

そうした緩やかな展開が急速に大きく動くのが、週終盤の木・金の放送である。

この作品の大きな特徴に「詳細をセリフやナレーションで語らないこと」「余白から想像させること」が挙げられるが、その良さが際立ったのが6月3日(木)の描写だ。

百音がリズムをとったことで泣いていた妹が泣き止んだこと、父・耕治(内野聖陽)のトランペット演奏の影響で、百音もサックスを始めたこと。

夜遅い練習のお迎えで父が寄り添ってくれていたこと。

そして、中学に入り、百音は一人だった吹奏楽部に仲間たちを誘い、コンクールに出るが、結果は散々...そこで父が指導に入ってくれ、部活になっていくこと。

さらに父の勧めもあって、音楽コースのある高校を受験すること。

その様子が、最小限のセリフで、BGMにのせて描かれていく。

中学時代の百音は音楽が好きで、能動的で、キラキラしていた。

「現在」の百音の喪失感を知っているだけに、この眩しい映像にちょっと胸が痛くなる。

そして合格発表日の3月11日、父と一緒に仙台に結果を見に行くが、百音の番号はなかった。

「午後から学校で練習が入っているから」「幼馴染と約束しているから」と帰ろうとする百音だが、父はジャズバーに誘う。

そして生演奏が始まり、目が離せなくなってしまう百音。

時は2時46分...ゾッとする。

そして金曜日。

描かれたのは「震災が起こった後」の島の様子だ。

百音が音楽を好きになった理由も、音楽をやめた理由も、震災時に島にいなかった理由も、約束を破った罪悪感も、無力感も、ここで一気に浮かび上がる。

この作品のもう一つの大きな特徴に、ヒロインのアップが非常に多いことが挙げられるが、「希望」や「喪失」などを瞳に映し出し、その視線の先にあるものを視聴者に想像させる演出を清原果耶の演技力が支えている。

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文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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