【おかえりモネ】疑問をぶつけて勉強する百音。この朝ドラが「家族で観るドラマ」である理由/5週目

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』で描かれる"多様性"」について。あなたはどのように観ましたか?

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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』第5週のサブタイトルは「勉強はじめました」。

ヒロイン・永浦百音(清原)が故郷の気仙沼から就職先の登米へ戻り、いよいよ「学び」始める。

しかし、この「学び」は「仕事」と「天気」の両面から平行して進んでいくのが心地良い。

まず、広葉樹の木材を使った新商品開発をサヤカ(夏木マリ)から命じられた百音が、小学生に林業のことを課長(浜野謙太)と共に教えに行ったところから、小学生の学童机を作ることを思いつく。

しかし、地元の木を使うことで補助金が出るとはいえ、木は重いうえ、手作りのためスピード量産ができないという問題が発覚する。

森林組合の人たちがサンプルを作ってみて、木の重さに初めて気づいたり、量産の大変さに苦悩したりというのは、あまりに呑気すぎるようには見える。

しかし、そうした利便性を「当たり前」として選び続けてきたことで、様々な産業が苦境にある現実を私たち自身が作ってきたのだと改めて感じてしまう。

だからこそ、様々な人が百音たちの思いに共感し、手助けしてくれたことで完成したのは、ベタながらも救われる展開だ。

一方、百音の勉強は、菅波(坂口健太郎)に教わりながら、非常にゆっくり進んでいく。

百音と菅波のやり取りから見える「勉強が苦手な子と、最初から得意な子」の対比がなかなかリアルで、面白い。

気象予報士は非常に難関の試験として知られているが、基礎がゼロの状態からいきなり参考書に挑む百音に、菅波は絵本などから始めることを勧める。

「飽和水蒸気量」など、学校で習うこと以前に、おそらく小学生でも生活の中で理解していくことを全く知らない百音。

「なんで? なんで?」と幼少期のように何でも疑問に感じ、説明しているそばから違うことに関心が行く様子に、つい驚き、呆れそうになるが、学びのきっかけも理解の仕方もスピードも人それぞれだ。

菅波はすぐ本筋から逸れる百音に面食らいながらも、「いったんそれは置いておきましょう」と何度も丁寧に向き合う。

おそらく子どもの頃から能力的にも環境的にも自然に効率良く学べた菅波にとって、百音の思考回路や行動パターンは未知のものだろう。

だからこそ、菅波も一つの学びを得ている気がする。

様々な年齢や立場・境遇の目線が盛り込まれ、多様性を強く感じさせる本作。

他者を知り、想像するという上でも、家族で観るドラマとして発見が多い。

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文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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