【おかえりモネ】朝ドラが描く家庭の日常。次女の"自由研究"と長女の"和"が見せた新たな形/4週目

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「『おかえりモネ』 で描かれた"自由研究"」について。あなたはどのように観ましたか?

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清原果耶主演のNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)『おかえりモネ』第4週では、ヒロイン・永浦百音(清原)の妹・未知(蒔田彩珠)の"夏休みの自由研究"が描かれた。

朝ドラで"自由研究"が描かれたことはほぼない。

戦争が描かれることの多い一代記モノでは、時代的に自由研究などなかったろうし、現代モノではヒロインが高校生くらいから描かれることが多いだけに、その時期は過ぎている。

しかし、本作で登場したのは「高校生の自由研究」。

そこで見えてくるのが、大人目線からの"たかが子どもの自由研究"と、高校生目線からの、"未熟ながらも本気の研究"の違いだ。

祖父・龍巳(藤竜也)のカキ養殖の現状を知っている未知は、カキの「地場栽苗」にチャレンジする。

種ガキを自分のところで作れば、種ガキの生産地に頼らなくてもカキの養殖ができるという、気仙沼の漁業の未来も見据えてのものだ。

しかし、未知が無理を言ったために、雨の中で船を出した龍巳がケガをし、家族の争いが起こる。

「俺がしくじった」だけで、そもそも「高校生の自由研究です」と言う祖父に「なんで高校生とか子どもとか言うの!?」「高校生の自由研究、バカにしないでよ! 本気でやってよ!」と激怒する未知。

仲裁しようと丁寧に説明をする父にも「お金のことばかり!」と、さらにキレる一幕が描かれた。

大人、しかも身内にとっては、未知が作業場の一角に研究スペースを作ってもらって熱心に取り組む姿も、おままごとの延長に見えるだろうし、費用のことなど現実がわかっていない甘さも見える。

でも、自分が中高生くらいの頃には大人と対等だと思っていたし、子ども扱いされることが一番不快だった気もする。

朝ドラは本来、女性が活躍した物語ではなく、"様々な時代、様々な地域の日本の家族を描くモノ"だ。

その点、本作での家族の描写は新しい。

何故なら、関係ない過去の話まで持ち出され、息詰まるような衝突をしても、すぐ元に戻れる家族ならではのやりとりは、どこかの家庭の日常の一コマをのぞき見したようなリアルさ、生々しさがあるからだ。

そして、揉め事を前に、父からもらった笛を唐突に吹いて空気を変えようとしたり、未知の研究にダメ出しする大人たちに反論したりと、無力ながらも一生懸命な百音。

朝ドラでは、西島秀俊が出ていた『とと姉ちゃん』をはじめ、戦争で不在の父の代わりを長女であるヒロインが務めるケースが多いが、こうした「無力で"和"の長女」のゆっくりした歩みもまた、新鮮だ。

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文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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