大切な家族や友人の死は、その先の人生を左右するほどの深い悲しみに包まれます。そんなつらい体験が、「苦しいことだけでなく、人生で最も大切なことを教えてくれる」という聖心会シスター・鈴木秀子さんは、著書『死にゆく人にあなたができること』(あさ出版)の中で大切な人を幸せに送り出すためのヒントを教えてくれます。今回は同書から、死との向き合い方を気づかせてくれるエピソードを厳選してお届けします。
死に向き合うときに大切な3つのこと
誰もがいずれ死を迎えます。
しかし、死はすべての終わりではありません。
そして死は、残された人に大切な意味や多くのメッセージを残してくれます。
死は人にとって、もっとも大切な人生の仕上げの時間です。
そして、死の先に続く生があり、人は死後に次の世界に入っていきます。
そこで大切なことは、不安や恐怖、恨みや後悔などを手放し、この世での人生を完成させることです。
ですから、大切な人を見送るご家族は悲しむだけでなく、死にゆく人が幸せに逝くためのサポートをしていくことが重要になってきます。
人は、祝福されてこの世に生まれてきます。
そうであるならば、死ぬときも例外なく、誰もが祝福されて、この世を卒業するべきです。
その権利と人間としての尊厳を誰もがもっているのです。
では、死にゆく人とそのご家族にとって、死と向き合い、受け入れていくために必要なこととは何でしょうか。
私は大きく、次の3つが大切だと考えています。
1.「大いなる存在」を実感して、人は生かされていると知ること
2.「聖なるあきらめ」によって執着を手放し、現実を受け入れること
3.死にゆく人との「仲よし時間」を大切にすること
「大いなる存在」を実感して、生かされていると知ることで、不必要に死を恐れることがなくなります。
そして、死は終わりではなく、その先に続く生があり、よろこびに満ちた世界があることがわかります。
「聖なるあきらめ」を理解することで、自分の力では超えられない、どうにもできないことがあることがわかると、執着を手放すことができます。
そして、現実を受け入れることができれば、死の本当の意味がわかるようになります。
すると、死にゆく人との「仲よし時間」がとても大切なことがわかります。
この時間をしっかりもつことができれば、死にゆく人は孤独を感じることなく、本当の気持ちを残される人たちに伝えることができます。
そして、安心して旅立つことができるのです。
これらが、死にゆく人にあなたができることであり、それがわかれば自分自身も癒すことができるようになります。
死はつらく悲しいだけではなく、これから生きていくうえで大切なことを学ぶ場でもあると気づくことができれば、当たり前だと思っていたこの命が、じつはどれほど尊く、奇跡的なことであるのかがわかるでしょう。
すると、死にゆく人への本当の愛を実感することができると思います。
【最初から読む】「私が死んでも悲しまないで・・・」死にゆく教え子への祈り
死を受け入れる「聖なるあきらめ」、大切にしたい「仲良し時間」、幸せな看取りのための「死へのプロセス」など、カトリックのシスターが教える死の向き合い方