赤ワインとともに食事するフランス人は心疾患で亡くなる人が少ない?/老けない人が食べているもの

老化スピードは食べているもので変わることを知っていましたか? 「一番お金も手間もかけずにできる老化対策が食事」だと美腸・美肌評論家として活躍する内科医の工藤あき先生は話します。その先生の著書『老けない人が食べているもの』(アスコム)から、老化を早める4大ポイント、その原因と対策をご紹介します。

【前回】アミノ酸スコアの高いタンパク質とオメガ3系オイルがしっとり肌に導く/老けない人が食べているもの

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フランス人に心疾患が少ないのはなぜ?

ポリフェノール、今でこそ健康的な成分としてポピュラーになりましたが、その効果に大きな注目が集まるようになったのは、赤ワインブームがきっかけです。

これはすでにあなたもご存知かもしれませんね。

では、なぜ赤ワインが世界的に大注目されたのか。

その裏側にはフランス人の不思議な特徴がありました。

「フレンチパラドックス」という言葉をご存知でしょうか?

あまり健康的とは思えないフランス料理をよく食べているフランス人が、実は健康であるという矛盾を指摘した言葉です。

ここに赤ワインブームの秘密があります。

フランス料理というと、肉類、バター、生クリーム、チーズなどがよく使われているイメージですよね。

脂肪、特に飽和脂肪酸がたっぷり。

一般的には、悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を促して脳卒中や心筋梗塞などを起こしやすい食事だといえます。

ところが、意外にもフランス人は、心臓病にかかって死亡する割合が、ほかの欧米先進国に比べて少ないことがわかりました。

逆に割合の多いイギリスと比べると3分の1程度です。

え、どうして? この矛盾をフランス・ボルドー大学のセルジュ・ルノー博士はフレンチパラドックスと表現しました。

そしてルノー博士は、「脂肪分の多い食事を食べているフランス人の心臓病死亡率が低いのは、抗酸化作用をもつ赤ワインを日常的に飲んでいるからだ」という研究結果も発表。

1991年にアメリカのテレビ番組で放送されたときには、赤ワインが飛ぶように売れたそうです。

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謎を解くカギはレスベラトロールだった!

こうして赤ワインはアンチエイジングに効果がある健康的なお酒として、世界中でブームになりました。

たしかに、濃いワインレッドでタンニンが強い品種のブドウは、ポリフェノールの含有量が多く、強い抗酸化作用をもつことがわかっています。

近年、特に注目されているのが「レスベラトロール」というポリフェノールです。

赤ワインには数々のポリフェノールが含まれていますが、心疾患の予防に効果があるのは、このレスベラトロールが含まれているためだとも考えられています。

レスベラトロールは、ワインの原料であるブドウの果皮などのほか、ブルーベリーやクランベリーなどのベリー類に含まれています。

赤ワインでは、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール、メルローなどの品種に特に多いことがわかっています。

ちなみに日本では、2011年、NHKの番組で寿命を延ばす成分としてレスベラトロールが取り上げられたときに大きな話題を呼びました。

赤ワイン健康法にもちょっと注意

ここまでを読んで「赤ワイン最高!」「今日から飲んじゃう」なんて思ったかもしれません。

でも少し待ってください。

いくら抗酸化パワーがあっても、お酒をたくさん飲みまくっていいかというと話は別です。

昔から"酒は百薬の長"などといわれ、適量ならからだにもいいと信じられてきました。

ところが2018年、世界的に権威のある医学雑誌『ランセット』で、「少量であっても飲酒は害になる」「飲酒量はゼロに越したことはない」という主旨の論文が発表され、「お酒で健康」説には疑問が投げかけられました。

赤ワインで心疾患の死亡リスクが下がったとしても、発がんなどのほかのリスクが高まってしまうわけです。

お酒に適量はない......お酒が好きな人にはちょっとショックな研究ですね。

しかも日本人には、体内に入ったアルコールを分解するときに働く「Ⅱ型アセトアルデヒド脱水酵素」の働きが弱い人が多くいます。

アルコールを分解するのが苦手で、すぐ顔が赤くなったり、気持ちが悪くなったりする人のことです。

要するに「お酒に弱い人」ですね。

そんな人が、ふだんはあまり飲まないのに「健康のため」と無理してお酒を飲むと、アルコールの悪影響を受けやすいので注意が必要です。

またレスベラトロールに関していうと、赤ワインから吸収できる量は少なく、人が必要量をとろうとすると1日1リットルを超えてしまうといいます。

いくらレスベラトロールがからだにいいといっても、これではさすがにアルコールのとりすぎになりますよね。

消化器内科の立場からも注意点がひとつ。

赤ワインに含まれるポリフェノールの一種、タンニンは、とりすぎると大腸のぜん動運動を抑制して便秘を悪化させる危険もあるので、あまりたくさん赤ワインを飲むことはおすすめできません。

ちなみにレスベラトロールは、赤ワイン以外にはベリー類のほか、ピーナッツの皮やアーモンド、ココアなどに含まれています。

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全5章にわたって酸化や糖化など「老化を早める4大ポイント」ついて理由や食事改善などをわかりやすく解説

 

工藤あき

消化器内科医、美腸・美肌評論家/内科医として地域医療に従事するほか、腸内細菌・腸内フローラに精通。「腸活×菌活」を生かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療に力を注ぐ。「植物由来で内面から美しく」をモットーに日本のインナーボタニカル研究の第一人者として注目されている

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『老けない人が食べているもの』

工藤あき/アスコム

「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれ、美腸・美肌評論家としても活躍する内科医の新書。酸化や糖化、細胞のターンオーバーの乱れ、胃腸の不調という「老化4大ポイント」をわかりやすく綴っています。食事を中心に日常から取り組める老化対策のアドバイスも。

※この記事は『老けない人が食べているもの』(工藤あき/アスコム)からの抜粋です。

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