老化スピードは食べているもので変わることを知っていましたか? 「一番お金も手間もかけずにできる老化対策が食事」だと美腸・美肌評論家として活躍する内科医の工藤あき先生は話します。その先生の著書『老けない人が食べているもの』(アスコム)から、老化を早める4大ポイント、その原因と対策をご紹介します。
ガサガサ肌は人気ダイエットのせい?
最近、糖質制限や炭水化物制限によるダイエットが、とても人気です。
食品成分表の糖質量や炭水化物の量が多いと「あ...!」と思ってつい買うのをためらったりしますよね。
糖質や炭水化物をとりすぎないことは、たしかに健康によい面もあります。
しかし一方で、過剰なダイエットによって肌荒れや便秘に悩む人も少なくありません。
これは明らかに栄養のかたよりや栄養不足のサインです。
私の患者さんにも、やせたい一心で、とにかく"食べない"ダイエットを続けた結果、肌が荒れてガサガサになってしまった方がいました。
せっかくやせても、かえって肌が気になったり、見た目が老けてしまったりしたら、ショックですよね。
どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。
原因のひとつは食物繊維や水分の不足による、胃腸の不調です。
糖質を制限しすぎると、水分が体内に保持しづらくなり不足します。
また炭水化物を制限しすぎると、食物繊維と水分が十分にとれなくなります。
これらは便秘を引き起こし、肌荒れのもとになります。
もうひとつの原因は栄養のかたよりです。
美肌のもとであるタンパク質も、とりすぎには注意しなければなりません。
必要以上のタンパク質は体内に吸収されず、そのまま腸内に運ばれて悪玉菌のえさになります。
悪玉菌が増えると腸内環境が乱れて、やはりその影響が肌にも及ぶようになるのです。
結局、その患者さんはダイエットにも失敗し、リバウンドしてパンやお菓子などをドカ食いした結果、さらに頑固な便秘になってしまいました。
こうなると、回復するまでにとても時間がかかります。
しつこい「大人ニキビ」は腸の不調が原因かも
肌とからだの不調の関係で、とてもわかりやすい例が便秘です。
やたらと肌荒れしたり、ニキビがくり返しできたりして悩んでいるとしたら、根本的な原因は腸の不調にあるかもしれません。
消化器の不調のなかでも、特に女性は便秘に悩まされることが多いのではないでしょうか。
肌の話に進む前に、そもそも便秘とはどんな症状なのか少し説明します。
実は、医学的に、「便秘」とは本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態と定義され、疾患名ではなく状態名です。
健康な人では、通常1日1回程度の排便がありますが、便秘症の場合は排便の回数が数日に1回程度に減ります。
排便の習慣は個人差が大きく、毎日便通があっても本人は排便が困難だと感じている場合があります。
反対に、数日に1回しか便通がなくても、本人は特に苦痛を感じない場合もあるのです。
便通の頻度ではなく、排便するのが困難、おなかが張って苦しいなどの症状を伴うものを「便秘症」と呼びます。
さて、そんな便秘症が、なぜ肌に悪影響を与えるのでしょうか?
なんとなく「よくなさそう」なイメージは湧くかもしれませんが、どんな仕組みになっているか、詳しく説明しましょう。
排便することによってからだの外に排出される便は、"食べもののカス"というイメージですが、健康な便の約80%は水分です。
残りの20%の固形成分のうち、食べもののカスは30%くらい。
あとは生きたままの腸内細菌や、はがれ落ちた腸の粘膜です。
腸内細菌や腸の粘膜を何日もおなかのなかにため込んでしまうと、腐敗して腸内に悪玉菌が増え、有害物質がたまってしまいます。
それが大腸の壁の毛細血管から吸収され、血液にのって全身をめぐって、さまざまな悪さをするのです。
皮膚に有害物質の影響が及ぶと、肌が荒れてザラついたり、顔色がくすむ、肌にツヤがなくなる、ニキビができるなどの肌トラブルが起こります。
ニキビといっても、顔全体にできるような思春期のニキビではなく、あごのフェイスラインなどにできる吹き出物、いわゆる「大人ニキビ」です。
慢性の便秘によって、肌荒れやニキビができやすくなることは、医学的にも検証されており、医学論文で報告されています。
そして、便秘が改善すると、お肌の調子がよくなる人が多いことも事実です。
このように、便秘症によって肌にダメージが出ている場合、いくら肌の外側からケアをしても、なかなか治らない可能性があります。
根本的に便秘が悪さをしているからです。
そして、便秘の治療には、食事の見直しが欠かせません。
食べものや食べ方を変えることの効果は大きいのです。
実際に、私のクリニックの外来でも、慢性の便秘で苦しんでいた患者さんが食生活の改善をして、2か月間続けたところ、便秘が治ってくるとともにニキビもよくなってきて、肌がきれいになったというケースがありました。
もちろん、症状の程度と患者さんの希望によって、便秘の治療薬を併用することもあります。
最近は、便秘のタイプによって使い分けられる効果の高い治療薬が数多く開発されていますが、薬だけに頼るのではなく、時間をかけてでも食生活から改善していくことが大切だと私は考えています。
全5章にわたって酸化や糖化など「老化を早める4大ポイント」ついて理由や食事改善などをわかりやすく解説