DVやハラスメント、性犯罪に娘のいじめ...「女性が巻き込まれやすいトラブル」は数多くあります。でも、そうした悩みを解決したくても、「誰かに相談したら逆に悪化するかも...」とどうしていいかわからない人も多いと言います。そこで、弁護士の上谷さくらさんと岸本学さんの著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より、女性の味方になってくれる「法律」についてご紹介。ぜひ、ご自身やお子さんがトラブルの参考にしてください。
不倫のボーダーラインはどこ?
次のうち、法的に不倫と認められるのはどれだと思いますか?
① 仕事の打ち合わせで、夫が職場の女性と食事に行った
② 夫が性交渉までOKの風俗に通っている
③ 夫が交際相手と「キスをした」ことが発覚した
④ 夫が同僚の女性社員に片思い。ただ、女性社員からは相手にされていない様子
一般的に、不倫の定義は一律に定まっているわけではありませんが、離婚理由になる不倫は、いわゆる「不貞行為」があった場合です。
不貞行為とは、性交渉があった場合を指します。
つまり法律上は、②だけが「不貞行為」となります。
③は「不貞類似行為」として、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたる可能性があります。
不貞類似行為とは、性交渉に類似する行為を行うことです。
性交渉を最後まで行わなかったとしても、ホテルなどで裸や下着姿で抱き合ったりするだけでも不貞類似行為にあたることがあります。
①・④は、不貞行為にあたることはありませんが、妻が嫌だと感じるのであれば、いわゆる「性格の不一致」として離婚に至ることもありえます。
1回きりでも不貞行為です。
1回きりでも、夫婦関係が破綻して離婚に至ることはあります。
【事例1】
相手が結婚しているのを知っていたのにお付き合い。相手の配偶者にバレたら慰謝料を請求される?
【ANSWER】
相手が既婚者と知りながら関係を持った場合、法律上の不貞行為となり、不法行為となります。ゆえに、相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。不貞行為により、「平和な結婚生活を送る権利」が侵害されると考えられるからです。 不倫相手が「もうすぐ離婚する」「別居していて夫婦関係は破綻している」と言っている場合、本当に夫婦関係が破綻していれば、「平和な結婚生活を送る権利」はすでに存在しないので、不法行為にはなりません。ただし、実際に夫婦関係が破綻していたと判断されるかは微妙です。夫婦関係が破綻しているかどうかは、別居の有無、別居期間の長さ、夫婦間の連絡の有無、離婚協議の有無など、総合的に判断されるためです。不倫相手の言葉は鵜呑みにしないようにしましょう。
【事例2】
独身とだまされていて、既婚者と知らずにお付き合いしていた。別れたけど、相手の配偶者にバレたら、慰謝料を請求される?
【ANSWER】
独身とだまされ、それを信じて交際していた場合、相手の配偶者から慰謝料請求されても、「独身とだまされて信じていた」ことを立証できれば、慰謝料を支払う必要はありません。ただし、独身と信じたことに過失があった場合は、慰謝料の支払い義務が生じる場合があります。逆に、「独身」とだましていた相手に対しては、「貞操権侵害」を理由に、慰謝料請求できる可能性があります。 貞操権侵害とは、次のような事情があるときに成立する可能性があります。
●既婚者であることを隠していた
● 既婚を知っていても、相手側の違法性が著しく大きい
● 相手が自分と結婚すると言っていた
ただし、ケースごとに事情は異なります。必ず貞操権侵害に該当するとはかぎりません。
相手の不倫を職場にばらすと名誉毀損罪に!
不倫行為を相手の職場にばらすなどの行為は、名誉毀損に該当し、逆に賠償義務を負うことがあります。
もちろん悪いのは不倫をした相手ですが、あなたが職場にばらすなど違法な行為を行うことで、相手に「つけいる隙」を与えるのは得策とは考えられません。
パートナーが不倫していたら......
不貞行為が認められる場合、その配偶者は離婚を請求できるほか、相手の不貞行為によって生じた精神的な苦痛に対して慰謝料も請求することができます。
不貞行為を立証するには、配偶者以外の人間と肉体関係があったことを証明することが求められます。
不貞行為が行われている時期が長いほうが、違法性は強くなります。
メールなどのやりとりの履歴は、強力な証拠となることが多いです。
不倫しているパートナーのスマホにそれらが残っている場合、写真を撮るなどして証拠化しておきましょう。
探偵に依頼して不倫相手とホテルに入る場面を撮った写真も重要な証拠になります。
不倫がパートナーに発覚したとたん目が覚めて反省し、夫婦関係を修復したいと言う人もいます。
その申し出を受け入れられるかどうかについてはよく考え、話し合ってみましょう。
婚姻期間の長さ、夫婦の年齢、財産の有無、子どもの有無、子どもの年齢などが、結論を出すにあたって大きな要素となるでしょう。
どうしたらいいのか判断できない場合、別居して冷却期間を置く、というのも一つの方法です。
ただし、パートナーが不倫相手と会いやすくなるうえ、別居期間が長くなれば、婚姻関係が破綻していると判断されるおそれもあります。
別居期間中にどのようなコミュニケーションを取っていくのか、修復に向けた別居なのか、離婚に向けた別居なのか、別居の目的などについて、別居前に話し合っておくのがよいでしょう。
なお、別居期間中の妻は夫に対し、「婚姻費用」という生活費を請求できる法律上の権利があります。
浮気と不倫の違い
結婚していない恋人関係の場合は、浮気されても相手に対して慰謝料を請求はできません。
浮気に対する慰謝料というのは基本的に、浮気によって「平和な結婚生活を送る権利」を侵害されたときに、配偶者やその浮気相手に対して請求することができるものだからです。
婚約中や事実婚の場合は、請求ができる場合があります。
実際に婚姻届を提出している夫婦とまったく同じというわけではありませんが、恋人関係よりは夫婦に近いと考えられるからです。
【あなたを守る法律】
民法 第770条 裁判上の離婚
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
ほかにも書籍では、恋愛・くらし・しごと・結婚など6つの章だてで、女性に起こりうる様々なトラブルに「どう法的に対処すべきか」が解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。
六法やDV防止法、ストーカー規制法...。女性の一生に寄り添う大切な法律が、6章にわたって解説されています。