市販薬や通院の交通費も控除の対象? やらなきゃ損&知って安心の「医療費控除」

2月16日から3月15日の間に申告会場やインターネットなどで行う確定申告。前年の年間医療費が10万円を超えた家庭は、確定申告をすれば「医療費控除」で税金が戻ります。国の制度を活用して家計の負担になりがちな医療費を節約しませんか? 社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんに「医療費控除」の仕組みを教えていただきました。

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国の制度を活用すれば医療費を節約できます

「申告するときは、生計を同じくする家族全員の医療費を合算できます。申告を忘れてしまっても、5年以内なら有効です」と井戸さんは話します。

医療費が10万円を超えなくても、1年間に「スイッチOTC医薬品(※1)」を1万2000円以上買った場合、確定申告でお金が戻るのが「セルフメディケーション税制」です。

「医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方だけ利用できます」(井戸さん)

1カ月の医療費が上限額を超えたとき、超えた分のお金が戻るしくみが「高額療養費制度」。

加入している公的医療保険に、受診した月の翌月の初日から2年以内に申請します。

※1 医師が処方する医療用医薬品のうち、薬局での販売が許可されて、一般用医薬品(OTC医薬品)に転換(スイッチ)したもの。


【やらなきゃ損】年に医療費が10万円を超えた人は医療費控除を申告する


医療費控除で戻ってくるお金の計算式
対象になるのは10万円(または所得の5%)を超えた人

(1年間の医療費 ― 10万円[総所得金額が200万円未満の場合は所得の5%])× 所得税率 = 戻ってくるお金

例:課税所得200万円の人が1年間に医療費が15万円かかった場合
(15万円-10万円)×所得税率10%= 5,000円
⇒5,000円が戻ってくる

医療費控除の対象になるもの・ならないもの

対象になるもの
●医療機関に支払った医療費、入院費
●医師処方の医薬品、漢方薬の代金
●市販の風邪薬、胃腸薬などの代金
●治療のためのマッサージの施術代
●通院、入院のための電車代、バス代
●虫歯の治療費、入れ歯代インプラント代 ほか

対象にならないもの
●病気予防のマスク代、うがい薬代
●インフルエンザなどの予防接種代
●健康維持のビタミン剤などの代金
●疲れをいやすためのマッサージの施術代
●人間ドック、健康診断の費用
●自家用車での通院のガソリン代、駐車場代 ほか

出典:国税庁、自治体のホームページを基に作成。


【やらなきゃ損】医療費は10万円以下だけど薬をたくさん買った人はセルフメディケーション税制を使う


薬代の「戻ってくるお金」の計算式
対象になるのは1万2000円を超えた人
[注意!]健康診断などを受けている人が対象です。

(1年間の対象医薬品代[金額が10万円を超えるときは10万円] ― 1万2000円)× 所得税率 = 戻ってくるお金

例:課税所得200万円の人が1年間に対象医薬品を3万円購入した場合
(3万円-1万2000円)×所得税率10%= 1,800円
⇒1,800円が戻ってくる


【知って安心】1カ月の医療費負担には上限額がある


ひと月にかかる医療費の上限額は?

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出典:厚生労働省のホームページを基に作成。

過去1年以内に3回以上、高額療養費の支給を受けた場合は「多数回該当」となり、4回目以降は上限額が下がります。


レシート、領収書はしっかり保管を。どの節約術にも必要です。

ほかに、下のような節約法も知っておけば安心です。

《これも大事》

●病院の受診は平日は午前8時~午後6時に済ませる
上記の時間帯以外の夜間や休日などに受診すると、通常の診療代よりも割り増しの金額を請求されてしまいます(※2)。

※2 土曜日は正午以降、割り増しになる場合がある。

●クレジットカード払いにする
病院の支払いにクレジットカードが使えるなら、クレジットカード払いに。ポイントを貯めると出費を少し取り戻せます。

●窓口で上限額以上払わなくて済む認定証がある
加入する公的医療保険の限度額適用認定証があれば、病院窓口での負担は上限額まで。高額療養費の申請の手間が省けます。

【まとめ読み】特集「やらなきゃ損&知って安心節約術」記事リスト

取材・文/松澤ゆかり イラスト/木波本陽子

 

<教えてくれた人>

社会保険労務士 ファイナンシャル・プランナー
井戸美枝(いど・みえ)さん
厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済問題や社会保障、年金が専門。著書に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)など。

この記事は『毎日が発見』2021年1月号に掲載の情報です。
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