徹底的にものの捨て方を学び、2週間で大きな片付けを完了。/自分を好きになろう

双極性障害の治療後、長く続く抑うつ状態と向き合ってきた筆者。ネガティブな世界からのサバイバルをあと押ししたのは、意外にも簡単な7つの「行動」でした。2ヶ月ぶりの換気、10秒片付けからはじまる、抑うつ状態への行動療法、認知療法的アプローチの実践と記録に、「自分を好きになる」ためのヒントを探してみましょう。

※この記事は『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』(KADOKAWA)からの抜粋です。

pixta_19232972_S.jpg前の記事「元気な人の真似をして、まず10秒片付けからはじめてみた。/自分を好きになろう(4)」はこちら。

【前回までのあらすじ:1章】
記者として東日本大震災の被災地取材を続けるうちにうつ病を発症。
のちに双極性障害の診断を受けて、2年間の休職と投薬治療後、社会復帰を果たした筆者。
それでも、喜びや悲しみ、意欲などの感情を取り戻すことはできずにいました。

しかし、ある1本の電話をきっかけに、ゴミだらけの部屋の片づけを始めます。

 

「これは」
床に積まれたゴミは、あまりに量があったため、もう永遠に自分の力ではどうにもできないとなぜか思い込んでいたのですが、手を動かすと10秒ほどで簡単にキレイになってしまいました。この事実に何かハッとして、私はとっさに反対側に積んであった惣菜弁当のカラも、別のゴミ袋に詰めました。そこにまた、床が出現しました。

ゴミを、マンションのゴミステーションに持っていき、部屋に戻ると、床が見えている寝室のベッドの周りは、埃っぽいけれどなんとなく健全な部屋に見えたのです。

すると、居間や廊下にあふれている、服や本の山、そしてなんだかわからないチラシや紙のゴミ、そしてねこの毛玉などが急に目に入ってきたのです。

「ひどい部屋に住んでたんだな」

1ヶ所をキレイにすると、部屋の他の場所の「汚さ」がはっきりと目に入ってくるという体験をこの時にしました。

そして、今目に入っているものの中で、明らかなゴミと言えるものを、すぐに袋に詰めて、ゴミステーションに持っていきました。はるか遠くに感じてめったに行かなかったゴミステーションも、エレベーターに乗ってしまえばすぐにたどりつけました。しかも24時間ゴミ捨て放題なのです。おなじマンションに12年住んでいて、このことに感謝したのはこの日がはじめてでした。

そして部屋に戻って窓を開けました。
換気をしたのは、実に2ヶ月ぶりです。

部屋の淀んだ空気と一緒にどんよりした気分も抜けていくような気持ちよさを感じました。私はこの2ヶ月ほど、部屋の換気すらできなかったことに改めて驚きました。

 

ものの捨て方がわからない

これでゴミはなくなったし、換気もした。今度は掃除機をかけて、拭き掃除をすれば、部屋はキレイになるのだろうか。

いや......、そうは思えない。

まだ部屋の中が雑然としている。「今はゴミがない部屋」であって「片付いた部屋」ではない。でも、この乱雑な感じの部屋をどうしたらホテルのようなすっきりした空間になるのか、わかりませんでした。私はまた書物に知恵を借りることにしました。

さらに、片付けの本を読んでみて気がついたのは、うちにはものが多すぎるということでした。掃除サービスは、清掃はしてくれるけど、ものを捨ててはくれないのです。なぜなら、捨てる判断ができるのは持ち主だけだからです。

以前、プロに清掃をお願いした時に「なんか今ひとつ」だなと思っていたのはこれが理由だったのです。
「掃除」の前には「ものを捨てないといけない」ということを知りました。まず捨てないと、片付いてキレイな部屋にはならないのです。

私の家は、収納の能力をはるかに超えて、家にものがありました。服や本があふれていました。片付け心に火がついた私は思いました、「一刻も早く、これを捨てたい」と。

しかし、捨てたいと思うものの多くは、掃除や片付けの能力が全くない自分には、手に負えなかったのです。「これが、燃えるゴミなのか、燃えないゴミなのか、資源ゴミなのか、粗大ゴミなのか、わからない」、恥ずかしいですがそんな状態でした。

「しかたない。片付けができる人間だったら、そもそも部屋が汚部屋になっていないもの。きっと、私とおなじような汚部屋の人たちがたくさんいるはずだし、その人たち向けのサービスがあるはず。まずはゴミを捨て切ってから、掃除や片付けを本で勉強しながら実践していこう」と決めました。

Googleで検索すると、「軽トラ積み放題8000円」というサービスがたくさんあるのを見つけました。ゴミを分別しないで、軽トラに載せられるだけ載せて引き取ってくれるサービスです。私は次の休みに早速電話で予約を入れ、その日のうちに本棚5本、厳選した数十冊を除いた本すべて、壊れたまま放置してあった冷蔵庫、山積みの服、集めたけど結局着なかった和服、健康器具、大量の食器など、前から不要だと思っていたものを持っていってもらいました。

結局軽トラ1台に載りきらず、追加料金で3万6000円になってしまいましたが、自分ひとりで処理することを考えたら永遠に片付けが終わらないと悟ったので、3万6000円は自分のために払おうと決め、支払いました。

私のゴミを積んだトラックが遠くに消えていくのを見ながら、こうやって人の助けを借りなければ捨てられないほどのものを、ゆっくりと時間をかけてではあるけれど、自分ひとりでこの部屋に運び込んできたんだなということに改めて驚いていました。

こんなふうに大きな片付けは、「軽トラ積み放題」のサービスを利用したりして、合計2週間ほどで済みました。

キッチンからも、何年も使ってない調味料や、使いそうもないけど取っておいた食器などを一掃しました。片付いたキッチンで、料理を久しぶりに作りました。食べ飽きた惣菜弁当ではない、自分のために作った料理を食べた時、しみじみ、「ああ、片付けてよかったな」と思いました。体の中までキレイになっていく感じがしたのです。

しかしそこからが「断捨離」の本番だったのです。

「これは本当に必要?」と、ものと向き合う日々がはじまりました。
「必要な気がするから取っておいたけど、やっぱりいらないな」と、部屋にあるものひとつひとつに向き合って、本当に必要なもの、好きなものだけを厳選し残しました。

それには半年ほどの時間が必要でした。この作業は、自分はどんなものを無駄買いしてしまうのか、その傾向をつかむいいきっかけになりました。私の場合は、2000~3000円くらいの服をネット通販で買ってしまうのが「クセ」です。今でもそのクセは残っていますが、着ないものは意識して捨てるようにしています。

 

次の記事「「掃除ができた」自信を元に、「自分が変われる」実感を味わえた。/自分を好きになろう(6)」はこちら。

 

 

岡 映里(おか・えり)

作家。1977年、埼玉県三郷市生まれ。職を転々としながら、慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。のち、Web開発ユニット起業、会社員、編集者、週刊誌記者などの仕事を経る。2013年、双極性障害と診断され休職、離婚などを経験。2年間の治療を経て2015年に症状が落ち着く。以後も続いたうつ状態を、行動療法、認知療法的な視点から改善。

 

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)
漫画家。1980年北海道札幌市生まれ。2004年、月刊アフタヌーンで四季大賞を受賞しデビュー。エッセイも発表している。

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』

岡 映里[著]・瀧波ユカリ[漫画]/KADOKAWA)

双極性障害の診断を受け、休職して2年間治療に専念。その後、長く続く抑うつ状態に向き合った筆者がたどり着いた、「行動」による回復の軌跡をたどるエッセイ。片付け、おしゃれ、筋トレなど、うつな思考回路から解放されるためにトライすべきことがわかる一冊です。

 

この記事は書籍『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』からの抜粋です
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