テレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?
だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。
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前の記事「睡眠時間より朝の目覚めのよさが大事/鎌田實「だまされない」」はこちら。
睡眠時無呼吸症候群に注意
睡眠が十分か、不足しているかについての目安は、昼間の眠気で判断できます。つまり、起きていなければならない場面で居眠りするならば、夜間の睡眠時間が不足しているか、あるいは、いい睡眠がとれていないことになります。
昼間、居眠りをしてしまう人で、見過ごしてはいけないのは、睡眠時無呼吸症候群の可能性です。日本の潜在的な患者さんは300万人いると言われている疾患です。
睡眠時無呼吸症候群かどうかを見抜く一番簡単な目安をお伝えします。家族が1時間、睡眠状態を見て、5回以上呼吸が止まっている状態が見られたら、この疾患を疑います。病院で検査をすれば、すぐに診断がつきます。
この疾患に関しては、治療法が確立されてきました。きちんと治療することで、糖尿病の人の血糖値がよくなったり、血圧のコントロールがよくなったりすることが知られています。難治性の高血圧だった人が、原因は睡眠時無呼吸症候群だったという経験もあります。
よい睡眠はうつを予防する
睡眠障害がある人は、つい寝る前の作法を気にしがちですが、最も大切なのは朝の起き方です。朝起きたら日光にあたることが、夜、快眠を得るために重要なカギとなります。
朝、日光にあたると、〈セロトニン〉というホルモンが分泌されます。セロトニンは十数時間後に暗くなると、〈メラトニン〉という睡眠導入を刺激するホルモンに変わるのです。
このセロトニンは「幸せホルモン」とか「喜びホルモン」とも言われ、たくさん分泌されることでうつ状態になるリスクを減らしてくれます。
よく寝てさえいれば、うつも予防できるわけです。それだけではなく、寝ている間に日中の記憶が海馬(かいば)から大脳皮質へ移動し、長期的な記憶に変わっていきます。いい眠りは記憶力や認知機能をよくしておくためにも大事です。
眠る前に身体を温める
いい睡眠をとるために2番目に大切なことは夜の準備です。この本では何度もおすすめしていますが、それはスクワットをすること。スクワットは道具もいらず、家のなかでもできます。夕食後にスクワットをし、少し汗ばむくらいに体温を上げると、体温が下がるときに眠りにつきやすくなります。
食後に運動してはいけないという、古くからの言い伝えがあります。これは間違いです。食後の軽い運動は心配いりません。食事をすると血糖値が上がりやすいのですが、食後に少し運動をすることで血糖値の上がり方を緩やかにすることができるのです。
食事は少し身体が温まるものがいいです。不眠が続いている場合にはキムチ鍋などを食べるのもいいと思います。寝る前にホットミルクを飲むのがいいと言われるのも同じ理由からです。身体が温まり、いい睡眠へ誘導してくれることが多いです。
あとは部屋を明るくしないこと。寝る2時間前くらいからは、インターネットを遮断することも大事なことです。いい睡眠はうつを予防してくれます。忘れないようにしてください。
※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら。
次の記事「人の不幸は蜜の味? 人間の脳は「人の不幸話」を聞くと快感を覚える/鎌田實「だまされない」」はこちら。
1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。
(鎌田 實/KADOKAWA)
社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!