誰もが抱える仕事や人間関係の悩み。キャビンアテンダントでの経験から人材教育の講師に転じた三上ナナエさんは「全ては気遣いでうまくいく」と言います。そこで、三上さんの著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)から、自分の魅力をアップし、対人関係もスムーズにする気遣いスキルを連載でお届け。自信をつけて「相手から信頼される気遣い」を身につけてみてはいかがでしょうか。
「声かけ」は、相手を知るための大事な手段
接客などで、最初に声をかける動作を「ファーストアクション」と言います。
実は、できる店員さんほどお客様へのファーストアクションが誰よりも早いという共通点があります。
ファーストアクションは何のために行うのかというと、「お客様の来店目的を見極めるため」のものです。
じっくり見たいのか、ただちょっと見たいだけなのか、自分用に買うのか、誰かへプレゼントする用に買うのか......など、お客様が求めていることを把握するため、言わば「相手を知るため」に行うものです。
では、なぜ早めに声をかける必要があるのでしょう。
それは、相手の気持ちを早めに察することが「気遣い」だからです。
早めに声をかければ、早めの判断ができ、あなたもお客様も有意義な時間を使うことができます。
ゆっくり選びたいときに、しつこく声をかけられてしまうと「自由に見たいのになあ......」と逃げ出したい気持ちになることがあります。
一方で、買う気満々でお店に来たのに、声をかけてくれる様子がないと「やっぱり買わなくてもいいかな......」と意気消沈してしまうこともあります。
商品のことを聞きたいのに聞けない、試着したいのに声をかけづらい......。
しつこくされるのは嫌だけど、必要なときはすぐに声をかけてほしいというのがお客様の心理です。
「早めに声をかける」と「早めの判断」ができる
以前、なんとなくフラッと入ったお店の店員さんの対応に、やさしい気遣いを感じたことがありました。
挨拶をした後、私が見ている商品の説明を軽くしてくれたのですが、私の反応が鈍かったのを感じたのか、「お声をかけていただければすぐに飛んで来ますので、ゆっくりご覧くださいね」と言って、サッと引き下がってくれたのです。
その引き際に、「ゆっくり見て楽しんでほしい」という店員さんの気遣いを感じました。
その後、自分のペースでお店の中を見ることができた私は、結局予定外のものまで買ってしまいました。
「声をかけたらうっとうしいと思われるかな」と心配になる方がいるかもしれません。
でも、「買ってもらうため」ではなく「相手を知るため」に話しかけると思えば、躊躇なく行えるはずです。
お客様の目的を見極められず放っておいてしまうことは、早めに声をかけることの何倍もお客様をがっかりさせてしまうリスクがあります。
お客様が何を求めているのか、その「判断材料」を得るためにも、ファーストアクションは重要なのです。
そして、声をかけたときには、相手が「どんな表情をしたか」「どんな声のトーンになったか」をしっかりと観察すること。
このまま会話を続けてOKなのか、NGなのかをそこで判断しましょう。
「無関心」にだけはならないで
マザー・テレサの名言「愛の反対は憎しみではなく無関心です」という言葉を聞いたことがある方も多くいらっしゃるでしょう。
「無関心」というのは、とても冷たい言葉です。
CA時代の先輩で、お客様からも仲間からも絶大な人気があったYさんは、いつも「どうした〜? なんか今日は元気なく見えるけど」と躊躇なく、まめに声をかけてくれる人でした。
声をかけてくれた後はサッと引いて放っておいてくれたり、つっこんで聞いてくれたり。
当時は「なんでこんなに気持ちに寄り添うコミュニケーションができるんだろう?」と不思議に思っていましたが、ためらうことなく声をかけることで、その後の私の一瞬の表情の変化を感じ取ってくれていたんだろうと、今では理解できます。
まずは、無関心にならず、声をかけてみること。
そして相手の反応を感じ取ること。
何より「早め」のアクションが、相手への一つの気遣いになることを覚えておきましょう。
【最初から読む】気遣いできないと評価がゼロも!?気遣いで変わる理由
元ANAのCAで4500回のフライトを経験した著者が会話や見た目などシーンごとに使える37の気遣いのコツを全5章で解説します