加害者にも被害者にもなりえるんです...。弁護士が解説する「認知症トラブル」の実情とは?/シニア六法(2)

相続、介護、オレオレ詐欺...。年を重ねるにつれ、多くのトラブルに巻き込まれるリスクがありますよね。そこで、住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より、トラブルや犯罪に巻き込まれないために「シニア世代が知っておくべき法律」をご紹介。私たちの親を守るため、そして私たちの将来のための知識として、ぜひご一読ください。

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加害者にも被害者にもなる「認知症」ならではの原因・特徴

認知症になると、さまざまなトラブルが起きます。

被害者にも加害者にもなります。

悲劇が起きないようまずは実情を知っておきましょう。

加害者になる認知症ならではの原因

自動車に硬貨などで傷をつけた事件(器物損壊罪)、深夜高速バス車内で就寝中の女性乗客のスカートをめくりあげて下着を盗み見た痴漢事件(強制わいせつ罪、条例違反など)、コンビニエンスストアでの食品万引き事件(窃盗罪)、繰り返す無銭飲食(詐欺罪)......。

高齢者に多い事件の例です。

中には重大な結果につながってしまうものも少なくありません。

冬になると多発する、たばこや火の始末が悪くて付近のものに延焼させる失火事件などは、本人や近隣住民の生命を奪う結果となることもよくあります。

これらの原因は、判断力が低下しているために、本能的に目の前のものに魅力を感じて、行動を抑制できないためとみられています。

また、幼児的な快楽(面白さ)を求めるケースもあります。

失火・自動車事故などは過失によるものが多く、例えば、注意力が散漫になっていることや、体力全般の衰えから必要な手順を踏めない、などによるうっかり事故が多いとみられます。

害を招きやすくする認知症の症状

次のような認知症症状が犯罪被害を助長します。

「引きこもり状態」

オレオレ詐欺の被害者の7~8割は高齢者です。

認知症の初期症状の「引きこもり状態」にある寂しい高齢者に「自称息子」などが助けを求めてくると、頼りにされていることを意気に感じて、多額の金銭を騙し取られてしまいます。

「取り繕い反応」

認知症の特徴である誘導にのりやすい「取り繕い反応」。

わかったふりをしてしまうので、巧妙に言いくるめられて理解できないまま、言われるがままに老後の資金を根こそぎ奪われてしまうこともあります。

「記憶障害」

物忘れ・記憶障害があると、犯人はそこを上手について騙します。

警察で被害の事情聴取をしようとしても、正確な話が聞けない、現金などを渡した相手の姿も忘れて特定できない、などの理由から犯人の検挙がむずかしくなります。

また、その人の情報を犯罪集団に知られて、詐欺の被害にも次々とあいやすくなります。

「被害妄想」

「高齢者施設での現金窃盗事件発生!」という事態がよくあります。

被害申告があると、警察が急行しますが、果たしてそれは事件なのか被害妄想なのか、警察が悩むところです。

実際には被害妄想か、現金のしまい場所を忘れているかのケースが多いといわれています。

しかし、それをよいことに高齢者宅を訪問する親戚や知人が、手にしたばかりの年金を盗んでいくこともありますので、気は抜けません。


ほかにも書籍では、認知症や老後資金、介護や熟年離婚など、シニアをめぐるさまざまなトラブルが、6つの章でわかりやすく解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてください。

【まとめ読み】『シニア六法』記事リスト

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住田裕子(すみた・ひろこ)
弁護士(第一東京弁護士会)。東京大学法学部卒業。現在、内閣府・総務省・防衛省等の審議会会長等。NPO法人長寿安心会代表理事。

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『シニア六法』

(住田裕子/KADOKAWA)

シニア世代にとって「老・病・死」は身近なものですが、そのうえで健康を維持し、トラブルをなるべく避けて穏やかに過ごしたいと望む方が多いと思います。介護トラブルやオレオレ詐欺に遭ったときの正しい対処法など、「老・病・死」に近づいたときのリスクと対応策が、とっても分かりやすく解説されています。法律を軸にパラパラとめくって、フンフンと頷ける…とっても「ためになる」一冊です!

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※この記事は『シニア六法』(住田裕子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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