約1300年の歴史を持つ神田明神(正式名称:神田神社)の神田明神文化交流館(EDOCCO)で12月7日(土)から2020年2月9日(日)にかけて、体験型展覧会「江戸東京あかり展 produced by 日本あかり博」が開催されています。
展覧会のコンセプト「伝統×革新」が示すとおり、展覧会では日本全国から集まった伝統工芸家による作品が最新のデジタル技術と融合し、アートや祭り、デザイン、職人、テクノロジーといった5つのジャンルを通じて、神田明神の地に新たな世界を紡ぎ出します。
貴方が知る悪役は、本当の悪役か?
「体験型展覧会」と銘打つ「江戸東京あかり展」は、日本の悪役をテーマとした展示が目玉となっています。その主人公は、ずばり、観覧客である皆さん。絵画などを観て回る普通の展覧会とは異なり、観覧客が展示を回って"アクション"を起こしていくことで、ストーリーが作り出されます。
よって、迎えるクライマックスの内容も皆さん次第。
どのようなストーリーが展開するのか、一部をご紹介します。
まず、会場に足を踏み入れて聞こえてくるのは、ジャパニーズヴィランズ(悪役)の代表格である吉良上野介(きら・こうずけのすけ)の声。
江戸時代中期に起こった赤穂浪士による吉良邸討ち入りで有名な、あの吉良上野介です。
しかし、白髪で皺だらけの苦々しい顔をした老人を想像した皆さんは、突如現れる上野介の姿に驚かれることでしょう。
ストーリーは若き上野介との出会いから始まり、百鬼夜行が跋扈するする世界を抜けて、最後には鬼と化した上野介と再び立ちはだかります。
そこで、皆さんはクライマックスを左右する重大な決断を迫られることに...。
平将門命をご祭神とする神田明神で、吉良上野介をストーリーの中心人物として取り上げた理由について、日本あかり博代表の芳賀尚賢さんはこう語ります。
「平将門は崇徳天皇、菅原道真とともに"日本三大怨霊"呼ばれる日本最強のヴィランズですが、今では多くの人から崇敬されています。
しかし、吉良上野介は亡くなってから300年も経つのにヴィランズのままで、擁護する意見はほとんどありません。
ところが、上野介が治めていた愛知県西尾市では、吉良家断絶後も崇敬を集めているのです。
江戸時代の庶民が熱中した歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』でヴィランズにされた上野介は本当に悪役だったのか?ということについて、伝統工芸とテクノロジーを融合させたあかりで表現したいと思いました」
最後に待ち構える「決断の間」では、来場者の呼びかけに呼応する吉良上野介の「青森ねぶた」が現れます。ここで皆さんには、吉良とどう対峙するのか、決断が迫られるのです。その決断次第で結末も変わるのだとか...
お酒も楽しめるアート系アトラクション
展示会では、ねぶた師の北村春一氏(青森県)が手がけた吉良上野介のねぶたをはじめ、ガラスに投影された水彩画のモーショングラフィックで描かれたなど、日本全国から集まった伝統工芸家とデジタルアーティストがコラボレーションした作品がストーリーを演出しています。
これら作品は、期間中毎日入れ替わる一葉式生け花家元の粕谷尚弘氏(東京都)の生花など、何度足を運んでも楽しめるように工夫されています。
決断を終えて、吉良と別れたあとは、一葉式生け花家元の粕谷尚弘氏の生け花が皆さんを送り出してくれます。唯一、アナログな美しさが残る部屋です
展覧会会場の入り口には、インスタレーションアート集団「MirrorBowler」による光の展示「異界の門」が。万華鏡のような不思議な空間が、皆さんを異世界へと誘います
異界に踏み入れた皆さんは、若き吉良との出会いを経て、鬼や妖怪たちのパレードに遭遇します。東京藝術大学で日本画を学ばれた気鋭の妖怪絵師・満尾洋之氏(千葉県)の作品も
こちらは、切り絵作家の早川鉄兵氏(滋賀県)による作品。自然や動物をテーマにした早川氏の切り絵は、その繊細さに驚かされます
そして、この展示会のもう一つの売りは、お酒を飲みながら鑑賞できること。
サントリーとコラボしたバーでは、日本固有の6種類のボタニカルを使用した「六GIN」をはじめ5種類のクラフトカクテル(1杯500円)が楽しめます。
最後に、神田明神の清水祥彦宮司に展示会への意気込みについてお聞きしました。
「12月15日にEDOCCOは会館1周年をむかえました。その前日の12月14日は吉良邸討ち入りで上野介の命日。江戸総鎮守でハイテクの街・秋葉原の氏神である本社から、伝統と革新をコンセプトとした江戸カルチャーを次世代に向けて発信していきたいと思います」
例年、初詣には約30万人が訪れるそうですが、展示会は初詣シーズンも開演しています。
EDOCCOでは着物レンタルもしていますので、和装でのアート鑑賞なんて粋なことも。年末年始の大人なお出かけに、いかがでしょうか。
<開催データ>
「江戸東京あかり展 produced by 日本あかり博」
会期:2019年12月7日(土)〜2020年2月9日(日)
時間:月〜木 10:00〜19:00(最終入場 18:30)、金〜日 10:00〜20:00(最終入場 19:30)
※2020年1月1日(水)〜3日(金)および祝日は20:00閉場(最終入場は19:30)
会場:神田明神文化交流館 地下1階「EDOCCO STUDIO」
住所:東京都千代田区外神田2丁目16-2
入場料:一般 1,500円(前売り 1,300円)、小中高校生 1,000円、未就学児 無料
■あかりのクラフトカクテル バー
期間:2019年12月7日(土)〜2020年2月9日(日)
時間:月〜木 15:00〜19:00(L.O. 最終入場まで)、金〜日・祝 14:00〜20:00(L.O. 最終入場まで)
展開メニュー例:六ソーダ、白モスコミュール、山崎焙煎樽熟成梅酒ソーダ 各500円(税込)