<この体験記を書いた人>
ペンネーム:uz
性別:男
年齢:58
プロフィール:公務員として勤務して35年。2歳下の妻とは見合い結婚で銀婚式を迎え、2人の子どもは独立しました。
公務員として勤続35年。
見合い結婚の2つ下の妻との共働きも25年が過ぎ、昨年は銀婚式を祝いました。
二人の子どもにも恵まれ、25歳の上の娘は親と同じく公務員に、22歳の下の息子もこの春無事就職、悪戦苦闘の子育ても卒業です。
子どもらが独立し、久々に二人きりの生活が始まりました。
「新婚気分ね」、妻はそう言いながら何やらガイドブックを指し示します。
どれどれ......と、おいおい『ニューアトラクションで魅力倍増のディズニーシー!』って......。
「二人きりのディズニーって初めてだよね! 楽しいわよ、きっと!」妙に無邪気な妻の目じりのしわが目につきました。
私としては熟年夫婦の落ち着いた列車の旅でも、と言いたいところでしたが、とりあえずは話に乗るふりをしました。
「ふーん、ディズニーねえ......」
いつもはダイニングテーブルを挟んで座る妻が、ガイドブックを開きながら隣の椅子(もともとは息子の場所)に陣取って、ページの写真を指さしながら身体を寄せてきます。
「ほら、これが新しいアトラクションでね......」距離を縮めようとしているのが見え見えです。
若い頃ならその雰囲気に乗ってもいいところですが、さすがにそういうムードに乗る気力はもうありません。
「おじさん、おばさんで行っても楽しめないんじゃない?」
視線をそらしながらお茶をすすりました。
「そんなことないよ! ......それとも私とじゃ嫌ってこと?」むくれる妻に思わず「まあ二人きりにはなったけど、もう若くはないんだからさ......」そこまで言ったところで、バンとページを閉じながら妻が席を立ちました。
しまった、と思いましたがもう手遅れ。
妻はそそくさとテーブルを片付けると、その日は早々に床についてしまいました。
翌朝、「おはよう」と声をかけても返事もしてくれません。
朝食のテーブルにはカップ麺が乗っていました。
「おい、これが朝飯?」
そう口走ったら「もう若くもないから作る気にならなくってね」と言い返される始末。
この日の晩飯はレンジでチンのコンビニ弁当でした...。
そんな冷ややかな日々が3日ほど続いて迎えた休日。
二人で買い物に出たのですが、相変わらずムスッとした妻に、(まったく子どもみたいだな)と思い、ふと思いついて手をつないでみました。
「なに?」びっくりした顔の妻。
「いや、まるで子どもだな、って思ってさ、迷子にならないようにね」
久々に握った手は、思ったよりも温かかった。
「何それ? 若くないんじゃなかったの?」まんざらでもない様子の妻。
「人間、年とると子どもにかえるって言うからな」
まあ、たまにはこんなのもいいか。
その日の夜の食卓に出てきたのは、久しぶりに妻の得意な肉じゃがでした。
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