ウンチの移植で病気が治る!? 健康維持に尽くす細菌に注目/身近な科学

さまざまな生物のすぐれた能力。私たちの暮らす地球の驚くべき事実。メディアをにぎわせる「最新科学」のニュース。驚くべき速さで進歩するITの話題。世の中には、学校では教わらなかった現代科学の話題があふれています。

職場で、学校で、家庭で。明日の雑談のネタにピッタリな、知っておくと自慢できる「科学の雑学」をお届け!

※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

ウンチの移植で病気が治る!? 健康維持に尽くす細菌に注目/身近な科学 pixta_2781474_S.jpg

前の記事「ホタルは「発光」、クラゲは「蛍光」。似て非なる、光る生き物たち/身近な科学(10)」はこちら。

 

これを移植すれば感染(かんせん)症が改善する!?
ウンチが〝薬〟になる

大切なモノなのに疎まれるモノの1つが「便(べん)[ウンチ]」でしょう。しかし、それを上手に加工すると「薬」になることが最近わかってきました。

そもそも便がどのような成分でできているかご存じでしょうか。すべて食べ物のカスと思っている人もいるようですが、実は健康な人の便の約80パーセントは水分です。残りの固形分の3分の1が食べ物のカス、もう3分の1が古くなった腸粘膜(ねんまく)、そして最後の3分の1が腸内細菌とその死骸(しがい)です。

ウンチの移植で病気が治る!? 健康維持に尽くす細菌に注目/身近な科学 p036.jpg 

なぜ、これほど多くの腸内細菌が毎日、体外に排出されるのでしょうか。それは、腸内にはさまざまな種類の細菌がすんでいて、人の健康維持に尽つくしてくれているからです。これは近年、腸内フローラと呼ばれ、注目されています。

腸内の菌には善玉菌と悪玉菌がいて、互いに勢力のバランスを保ちながら暮らしています。そのバランスが崩れると、人は体調を乱したり病気になったりします。そこで、健康な人の便を他人に移植して腸内環境を改善するという試みが、2013年、米国で初めて行なわれました。

ウンチの移植で病気が治る!? 健康維持に尽くす細菌に注目/身近な科学 p037.jpg

 

その結果、治りにくい腸管感染症患者の症状に大きな改善が見られたそうです。ウンチが〝薬〟に変身したのです。

 

次の記事「かなたの星も裸眼でキャッチ。人間の目に備わった奇跡の感知能力/身近な科学(12)」はこちら。

 

 

涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

610957773744e1380612f9b4fc0a9d258e0d707f.jpg

『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

動植物、天体から物理、統計学まで。知っておくべき科学の基本や、現代科学を読み解くのに必要な知識について、身近な例を挙げながらやさしく解説! わかりやすい図解(イラスト・写真)つきなので、学生から年配層まで、科学全般の知識が浅い読者でもとっつきやすく、「科学の教養」が身につけられる100項目を提供する内容です。

 

週3日、LINEでオススメ記事が届く!

この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。
PAGE TOP