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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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遺伝子の欠損が「無関心」を生んだ。
猫は「甘み」を感じない!?
犬は甘いものが大好きです。しかし、猫はそれほど関心を示しません。猫は「甘み」を感じないのでしょうか。実は近年、このことが遺伝学的に正しいことが示されました。
味覚の科学的解明は、その他の感覚に比べて遅れていました。ところが20世紀末、舌にある味の感覚器である味蕾(みらい)の構造がわかり、ようやく味覚についてさまざまな事実が解明され始めました。
味覚は甘み、うまみ、苦(にが)み、塩味、酸味の5つが基本。それぞれの味は食物中に含まれる化学成分が源みなもととなっています。たとえば甘みは炭水化物、うまみはタンパク質。それらの化学成分が舌にのると、味蕾に納まった味の検知細胞が活性化します。
その検知には特有のタンパク質が対応します。甘みの検知はT1R2、T1R3と名づけられた2種のタンパク質が協力して担当します。しかし猫の場合、タンパク質T1R2をつくる遺伝子に欠損があるのです。猫が甘みを感じない理由は、ここにあります。
甘みを感じるタンパク質をつくるための遺伝子に欠損があることは、ネコ科動物一般にいえます。肉食を主にしたことで、甘み、つまり炭水化物を検知する必要がなくなったからと考えられています。