遺伝子レベルで欠損あり。ネコ科動物に「甘党」がいないワケ/身近な科学

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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

遺伝子レベルで欠損あり。ネコ科動物に「甘党」がいないワケ/身近な科学 pixta_28863937_S.jpg前の記事「オス猫は左、メス猫は右。明らかになりつつある「利き手&利き足」の謎/身近な科学(6)」はこちら。

 

遺伝子の欠損が「無関心」を生んだ。
猫は「甘み」を感じない!?

犬は甘いものが大好きです。しかし、猫はそれほど関心を示しません。猫は「甘み」を感じないのでしょうか。実は近年、このことが遺伝学的に正しいことが示されました。

味覚の科学的解明は、その他の感覚に比べて遅れていました。ところが20世紀末、舌にある味の感覚器である味蕾らい)の構造がわかり、ようやく味覚についてさまざまな事実が解明され始めました。

遺伝子レベルで欠損あり。ネコ科動物に「甘党」がいないワケ/身近な科学 p028.jpg味覚は甘み、うまみ、苦(にが)み、塩味、酸味の5つが基本。それぞれの味は食物中に含まれる化学成分が源みなもととなっています。たとえば甘みは炭水化物、うまみはタンパク質。それらの化学成分が舌にのると、味蕾に納まった味の検知細胞が活性化します。

遺伝子レベルで欠損あり。ネコ科動物に「甘党」がいないワケ/身近な科学 p029.jpgその検知には特有のタンパク質が対応します。甘みの検知はT1R2、T1R3と名づけられた2種のタンパク質が協力して担当します。しかし猫の場合、タンパク質T1R2をつくる遺伝子に欠損があるのです。猫が甘みを感じない理由は、ここにあります。

甘みを感じるタンパク質をつくるための遺伝子に欠損があることは、ネコ科動物一般にいえます。肉食を主にしたことで、甘み、つまり炭水化物を検知する必要がなくなったからと考えられています。

 

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涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

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『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。

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