仕事も子育ても一段落。そろそろ自分のために何かを学びたい。そう考えている人、多いのではないでしょうか。そんな人への「独学」のすすめです。最新刊の『「超」独学法』が話題の野口悠紀雄さんに、お話を伺いました。
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何歳からでも独学はできる。外国語を学べば世界が広がる
「言葉を覚えるのは楽しいこと。世界が広がります。トルストイ(1828~1910)は70歳を過ぎてからイタリア語の独学を始めたそうです。あの時代ですから、いまなら、90、100歳から勉強を始めたようなもの。『戦争と平和』にも、年を重ねてから高等数学を勉強する老公爵が登場します。
若い頃は変な人だと思っていましたが、いまはその気持ちがよく分かる。好きな勉強は、時間ができたときに自分のペースでやるのが楽しい。年を重ねても好きな勉強ができるというのは、昔は特権階級しかできない贅沢だったのです。それがいまでは、やる気さえあれば誰でもできるのですから恵まれた時代です」
海外旅行を楽しむために英語をマスターしよう、イタリアオペラを堪能したいからイタリア語を学ぼうなど、動機は何でもOK。
覚えた語学を誰かに披露して自慢する、褒められる体験をすると、学ぶ意欲を高められると野口さん。
「シェークスピアの名言などはすでに世界共通語ですから、暗唱しておくと海外でも一目置かれるかもしれない。『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』の名ぜりふを覚えましょう。名画の名ぜりふも同じように世界共通語。例えば『ローマの休日』の有名な記者会見のせりふなども、覚えておくと使い道があります」
そのシーンとは、オードリー・ペプバーン扮(ふん)するアン王女が、グレゴリー・ペック扮する新聞記者のジョーとローマでの夢のような一日を過ごした翌日の、記者会見シーンのこと。
「今回の訪問ではどの都市がいちばん印象に残っているか?」と聞かれたアン王女は、「いずれもそれぞれに忘れがたく、選ぶのは難しいですが」と、差し障りのない答えをしようとしますが、思いがあふれて「ローマ!」と答えてしまうのです。
「私も、スタンフォード大学にいたとき、このシーンのせりふを使ったことがあります。先生や学生たちと何回か食事に行き、『どのレストランが良かったですか?』と聞かれ、『いずれもそれぞれに忘れがたく......』と『ローマの休日』のせりふを英語で暗唱すると、その場の全員が『ローマ!』と声を上げました。そんなときこそ、人生の至福の瞬間。語学を学ぶことが、さらに楽しくなりますね」
大好きな映画を見ながら学ぶ。気になることをスマートフォンで検索して学ぶ。超簡単な独学法を毎日の生活に取り入れることで、人生はまだまだ変わりそうです。
独学のすすめ 3カ条
●誰でも、いつからでも独学は始められる。
●独学なら自分のペースで自分流に学べる。
●スマートフォンの検索機能、自動翻訳機能をマスターすれば、外国語の独学が簡単にできる。
取材・文/丸山桂子