人生100年時代、仕事の引退は80代、と言われるようになっている現代において、私たちに求められているのは「どれほど個人の市場価値を上げられるか」ということ。ではどうすれば個人の市場価値は上げられるのでしょうか?その答えは「独学」にありました。
本書『「超」独学法 AI時代の新しい働き方へ』は、今日から始められる「独学」の勉強法を集めた最強の独学メソッド本。独学への不安を払しょくし、新たな可能性を見出す手がかりがここに!
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組織人でなく、市場価値がある人間に
多くの日本人は、これまで組織に対する依存心が強かった。できるかぎり大きな企業に入社し、そこで昇進するという生き方だ。それは、必ずしも間違った方向というわけではなかった。むしろ、ある意味で合理的なものだった。しかし、いまや、1つの組織にすべてをかけてしまうのは、リスクが高い。組織自体がいつまで続くか分からない。
だから、組織に依存すればよいのでなく、一人一人が「個人としての市場価値(マーケットバリュー)を持っているかどうか?」を問われる。「どの組織に所属しているか」でなく、「どれだけの能力を持っているか」が重要なのだ。逆に言えば、組織にこだわる必要は薄れている。
つまり、「組織人から個人の時代へ」という変化が生じようとしている。組織の中で上司の指示どおりに仕事をしていればよい時代は終わった。ましてや、上司の機嫌をとってゴマをすれば出世できる時代は、大昔のものになった。変化への対応は、個人の立場から必要であるばかりでなく、日本全体としても必要なことだ。日本の産業構造や経済構造を大きく変えなければならない。
経営者にとっても自己投資が重要
自己投資が必要なのは、若い人々だけではない。経営者にとっても、大変重要なことだ。日本の経営者は、大学で法律や経済を勉強した人が多い。それらの知識は、実際の企業経営や経済運営とはほとんど関係がない。
経営は企業に入ってから、経験を通じて習得した。日本の大学の法文系学部には、これまでは、職業に必要な高度な知識や基礎を教えるという発想がなかった。「大学とは真理追究の場であり、実際のビジネスに関係があることを教える場ではない」という観念が強かったのだ。
しかし、そのために、専門的な経営者が生まれなかったことは、事実である。その結果、「企業は人なり」とか、「企業の社会的責任」などという薄っぺらなことしか言えない人が多い。また、インチキ経営法やインチキ投資法に簡単にだまされてしまう。企業の進むべき方向について、的確な判断力を持っている人が多いとは思えない。現在の日本で最も必要とされることは、経営者の再教育だ。
人生100年時代は、いつまでも勉強を続ける時代長寿化時代においては、人生に新しいステージが出現する。人間の生物的条件から言えば、引退年齢が70~80歳にならなければならない。仕事をする期間が長くなり、働き方も画一的ではなくなる。だから、選択肢の幅も広がらなければならない。
人生100年時代になれば、大学で学んだものだけでは不十分だ。若いときに教育されたことだけで一生生きていける時代ではなくなる。リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFESHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社、2016年)は、人生100年時代には、ライフステージを構成し直すことが必要だと言う。
そのためには、新しい知識を得ることが必要だ。そして、それは独学によって得るのが最も効率的だ。勉強するのは若いときのことであると考えている人が多い。しかし、これからは、高齢者の独学が重要な課題になる。高齢者は、それまで得た知識のストックを保有しているわけだから、新しい知識を吸収し、それを解釈し、それを活用することを、若い人よりは容易にできるはずである。