「結果が出せる」「結果を出せる」どちらが自然? 言葉の変化の理由を考察する

使われない単語は特徴が失われていく

ではなぜこの格助詞「が/を」のゆれが起こったのでしょうか。実ははっきりとした理由はまだ分かっていないのですが、一つの可能性として以下のようなことが考えられます。言葉の一般的な特徴として、あまり使われない単語はその単語が持っている独自の(珍しい)特徴を失って、よく使われる単語の(よくある)特徴を持つように変化するということがあります。

例えば、英語の動詞は、よく使われる一部の動詞が元々の特徴を保って不規則動詞として残り、それ以外のあまり使われない多くの単語は特徴を失って、共通の語尾変化を示す規則動詞に変化したと言われています。

これは文法だけではなく、発音などにも見られます。日本語(共通語)の名詞アクセントの中で、例えば畑を耕す「鍬」や穀物の「稗」は本来「ク」や「ヒ」のように2拍目が高いのですが、最近は「ワ」や「エ」のように1拍目を高く発音する人が増えています。

これらの名詞は、最近の日常生活ではあまり使う機会がないため、元々単語が持っている「2拍目が高い」という特徴を失って、よくある「1拍目が高い」という特徴に変わっていると言われています*3。

これを元に格助詞「が/を」のゆれを考えてみると、先ほど説明したように、日本語では目的語の格助詞に「を」を付けることが多く、「が」を付けるのはいくつかの動詞に限られます。そのため、目的語に「が」を付けるという特徴はあまり使われず、結果としてこれが失われて、よくある基本的な「を」を使うように変化しているということが考えられます。

*1―南部智史(2007)「定量的分析に基づく「が/の」交替再考」『言語研究』131、pp.115-149、日本言語学会
*2―佐野真一郎、南部智史(2015)「コーパスを用いた現代日本語における「が/を交替」の実証的研究」『日本言語学会第150回大会発表論文集』pp.68-73、日本言語学会
*3―上野善道(2008)「母は昔はパパだった、の言語学」『ことばの宇宙への旅立ち―10代からの言語学』(大津由紀夫編)pp.60-62、ひつじ書房
*青木ひろみ(2008)「可能表現の対象格標示「ガ」と「ヲ」の交替」『日本語教育論集 世界の日本語教育』18、pp.133-146、国際交流基金日本語国際センター

 

回答者:佐野真一郎

慶應義塾大学 商学部 教授。博士(言語学)。専門分野は音声学・音韻論、社会言語学、コーパス言語学。コーパス・実験による言語理論の仮説検証、言語使用・言葉のゆれに関する定量的研究を行っている。

 

編者:国立国語研究所

昭和23(1948)年に、日本人の言語生活を豊かにする目的で誕生した、日本の「ことば」の総合研究機関。 ことばの専門家が集まり、言語にまつわる基礎的研究および応用研究を行う。 平成21(2009)年10月に大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立国語研究所となり、大学に属する研究者とともに大型の共同研究・共同調査を行うなど、さらに活発な活動を展開。略称は国語研、NINJAL。


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※本記事は国立国語研究所編集の書籍『日本語の大疑問2』(幻冬舎)から一部抜粋・編集しました。

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