花粉症の人には朗報? 遺伝子の掛け合わせで誕生した「無花粉スギ」/身近な科学

さまざまな生物のすぐれた能力。私たちの暮らす地球の驚くべき事実。メディアをにぎわせる「最新科学」のニュース。驚くべき速さで進歩するITの話題。世の中には、学校では教わらなかった現代科学の話題があふれています。

職場で、学校で、家庭で。明日の雑談のネタにピッタリな、知っておくと自慢できる「科学の雑学」をお届け!

※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

花粉症の人には朗報? 遺伝子の掛け合わせで誕生した「無花粉スギ」/身近な科学 pixta_14729588_S.jpg前の記事「味と形のいいとこ取り! スーパーに並ぶ野菜は純系2種のハイブリッド/身近な科学(16)」はこちら。

 

花粉症に悩む人に朗報!「花粉の出ないスギ」がある

花粉症の人にとって、スギ花粉が飛散する季節は憂鬱です。うれしいことに、その悩みを解決する無花粉スギが開発され、植林され始めています。子孫を残せないスギをどうやって開発できたのでしょうか。

それは「花粉作成を抑える」遺伝子[雄性不稔(ゆうせいふねん)遺伝子]を持つスギと、この遺伝子の発現を抑える遺伝子(稔性回復遺伝子)を持つスギがあるからです。雄性不稔遺伝子と稔性回復遺伝子の有無の組み合わせで、4パターンのスギが存在することになります。このうち雄性不稔遺伝子を持ち、稔性回復遺伝子を持たないスギを掛け合わせ、短期間に無花粉スギを開発できたのです。

花粉症の人には朗報? 遺伝子の掛け合わせで誕生した「無花粉スギ」/身近な科学 p049.jpg

 

無花粉スギのように、花粉ができない性質を雄性不稔といいます。その原因となる雄性不稔遺伝子はミトコンドリアの中にあり、これは多くの植物に共通しています。そこで、雄性不稔遺伝子を持つ株に別の株の花粉をつけることで、人が意図した性質を持つ種がつくり出せます。この技術は、現在多くの植物栽培で利用されています。

 

次の記事「用心棒を呼ぶキャベツ。植物は匂いでコミュニケーションをとる/身近な科学(18)」はこちら。

 

 

涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

610957773744e1380612f9b4fc0a9d258e0d707f.jpg

『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

動植物、天体から物理、統計学まで。知っておくべき科学の基本や、現代科学を読み解くのに必要な知識について、身近な例を挙げながらやさしく解説! わかりやすい図解(イラスト・写真)つきなので、学生から年配層まで、科学全般の知識が浅い読者でもとっつきやすく、「科学の教養」が身につけられる100項目を提供する内容です。

この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。

この記事に関連する「趣味」のキーワード

PAGE TOP