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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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花粉症に悩む人に朗報!「花粉の出ないスギ」がある
花粉症の人にとって、スギ花粉が飛散する季節は憂鬱です。うれしいことに、その悩みを解決する無花粉スギが開発され、植林され始めています。子孫を残せないスギをどうやって開発できたのでしょうか。
それは「花粉作成を抑える」遺伝子[雄性不稔(ゆうせいふねん)遺伝子]を持つスギと、この遺伝子の発現を抑える遺伝子(稔性回復遺伝子)を持つスギがあるからです。雄性不稔遺伝子と稔性回復遺伝子の有無の組み合わせで、4パターンのスギが存在することになります。このうち雄性不稔遺伝子を持ち、稔性回復遺伝子を持たないスギを掛け合わせ、短期間に無花粉スギを開発できたのです。
無花粉スギのように、花粉ができない性質を雄性不稔といいます。その原因となる雄性不稔遺伝子はミトコンドリアの中にあり、これは多くの植物に共通しています。そこで、雄性不稔遺伝子を持つ株に別の株の花粉をつけることで、人が意図した性質を持つ種がつくり出せます。この技術は、現在多くの植物栽培で利用されています。
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