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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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純系2種のハイブリッド「F1種(しゅ)」。
スーパーの野菜の形が揃っている秘密
スーパーで売られている野菜の形がきれいに揃っていて、しかもおいしいことを不思議に思いませんか。流通上、形が揃うとパッケージや陳列に便利といわれますが、そもそもどうやって実現しているのでしょうか。
これを可能にしているのがF1種と呼ばれる種です。F1種とは、遺伝子が揃っている純系の2種類を交配させてつくった1代目の雑種(ハイブリッド)のこと。犬でいうなら、純血の柴犬と純血の秋田犬から生まれた子犬はF1種です。
たとえば、「甘い」という性質を優性(ゆうせい)[遺伝的に1代目の子に引き継がれる性質]に持つ純系のトマトと、「形が揃う」という性質を優性に持つ純系のトマトとを掛け合わせてみましょう。生まれたF1種は、これら両親のよいところを引き継ぎます。こうして、甘くて形も揃ったトマトが収穫されます。野菜の形が揃う秘密はここにあるのです。
大根のF1種の栽培法も見てみましょう。大根のようなアブラナ科の植物は自家不和合性(じかふわごうせい)といって、同じ株の花では受精しない性質があります。そこで、F1種の大根をつくるには、2つの純系種を交互に並べて植え、ハチを飛ばせて交配させます。すると、採れる種子のほとんどはF1種になるのです。
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