用心棒を呼ぶキャベツ。植物は匂いでコミュニケーションをとる/身近な科学

さまざまな生物のすぐれた能力。私たちの暮らす地球の驚くべき事実。メディアをにぎわせる「最新科学」のニュース。驚くべき速さで進歩するITの話題。世の中には、学校では教わらなかった現代科学の話題があふれています。

職場で、学校で、家庭で。明日の雑談のネタにピッタリな、知っておくと自慢できる「科学の雑学」をお届け!

※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

用心棒を呼ぶキャベツ。植物は匂いでコミュニケーションをとる/身近な科学 pixta_1063296_S.jpg前の記事「花粉症の人には朗報? 遺伝子の掛け合わせで誕生した「無花粉スギ」/身近な科学(17)」はこちら。

 

寡黙な生き物の"見えない"生存戦略
植物は匂いで「用心棒」を呼ぶ

植物の葉を芋虫が食べている様子を見ると、植物はまったくの無防備のようです。しかし、植物だって黙っているわけではありません。ある方法で〝用心棒〟を呼んでいるのです。

たとえば、キャベツがアオムシに食べられているとしましょう。このとき、キャベツは〝用心棒〟となるハチの一種、アオムシコマユバチを呼び出します。このハチはアオムシの天敵で、アオムシの体に取りつき、産卵管を刺して数十個の卵を産みつけます。そして体内で孵化(ふか)した幼虫は内側からアオムシを食い殺すのです。

では、どのようにキャベツは用心棒のアオムシコマユバチを呼び出すのでしょうか。それは匂いです。「アオムシに食べられた」ことを伝える特有な匂いを出してハチを呼ぶのです。

用心棒を呼ぶキャベツ。植物は匂いでコミュニケーションをとる/身近な科学 p050.jpg

 

植物は昆虫を呼ぶ以外に、仲間に情報を伝えるのにも匂いを活用しています。たとえば、野原によく生えているシロイヌナズナに幼虫がつくと、匂いのSOS信号を発して近隣(きんりん)の仲間に伝えます。仲間はそれをキャッチし、虫の嫌いな化学物質を増産し防御を固めます。

いつも寡黙で運命を甘受しているように見える植物ですが、意外にしたたかで積極的な生き方をしているのです。

用心棒を呼ぶキャベツ。植物は匂いでコミュニケーションをとる/身近な科学 p051.jpg

 

次の記事「人体の半分を占める細菌やウイルス、菌類は、私たちの臓器と「会話」している!/身近な科学(19)」はこちら。

 

涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

610957773744e1380612f9b4fc0a9d258e0d707f.jpg

『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

動植物、天体から物理、統計学まで。知っておくべき科学の基本や、現代科学を読み解くのに必要な知識について、身近な例を挙げながらやさしく解説! わかりやすい図解(イラスト・写真)つきなので、学生から年配層まで、科学全般の知識が浅い読者でもとっつきやすく、「科学の教養」が身につけられる100項目を提供する内容です。

この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。

この記事に関連する「趣味」のキーワード

PAGE TOP