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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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寡黙な生き物の"見えない"生存戦略
植物は匂いで「用心棒」を呼ぶ
植物の葉を芋虫が食べている様子を見ると、植物はまったくの無防備のようです。しかし、植物だって黙っているわけではありません。ある方法で〝用心棒〟を呼んでいるのです。
たとえば、キャベツがアオムシに食べられているとしましょう。このとき、キャベツは〝用心棒〟となるハチの一種、アオムシコマユバチを呼び出します。このハチはアオムシの天敵で、アオムシの体に取りつき、産卵管を刺して数十個の卵を産みつけます。そして体内で孵化(ふか)した幼虫は内側からアオムシを食い殺すのです。
では、どのようにキャベツは用心棒のアオムシコマユバチを呼び出すのでしょうか。それは匂いです。「アオムシに食べられた」ことを伝える特有な匂いを出してハチを呼ぶのです。
植物は昆虫を呼ぶ以外に、仲間に情報を伝えるのにも匂いを活用しています。たとえば、野原によく生えているシロイヌナズナに幼虫がつくと、匂いのSOS信号を発して近隣(きんりん)の仲間に伝えます。仲間はそれをキャッチし、虫の嫌いな化学物質を増産し防御を固めます。
いつも寡黙で運命を甘受しているように見える植物ですが、意外にしたたかで積極的な生き方をしているのです。