病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
◇◇◇
前の記事「がんの発生サイン「腫瘍マーカー」。検査結果は慎重に受け止めて/やさしい家庭の医学(76)」はこちら。
血液の逆流を防ぐ弁が障害されて起こる
「心臓弁膜症」
●虫歯やけがによる細菌も原因に
心臓には、静脈血や動脈血が逆流せず、一方向に流れるように四つの弁が付いています。右心房と右心室の間に「三尖弁(さんせんべん)」、右心室と肺動脈の間に「肺動脈弁」、左心房と左心室の間に「僧帽弁(そうぼうべん)」、左心室と大動脈の間に「大動脈弁」があります。
それぞれの弁は、血液を送り出すときには開き、送り出したあとは閉じて、血液が逆流しないようになっているわけです。
これらの弁の周囲や開閉の組織に障害が起こるのが「心臓弁膜症」です。心臓弁膜症は心不全の原因になりやすい症状で、先天的な異常によるものと後天的な障害によるものとに大別されます。
後者の原因となるのは、リウマチ熱や心筋梗塞(しんきんこうそく)、動脈硬化などです。機能障害による分類としては、血流の逆流が生じるものを「閉鎖不全症」、血流を阻害(そがい)しているものを「狭窄(きょうさく)症」と呼んでいます。
一昔前までは、リウマチ熱の後遺症によって心臓弁膜症に罹(かか)るケースが多かったのですが、現在では心筋梗塞によって僧帽弁を支える筋肉や組織が障害され、機能が低下して閉鎖不全となる場合や、動脈硬化や加齢によって弁の硬化が起こって発症する場合、また、虫歯やけがなどによって血液中に細菌が混入し、その細菌が弁を障害する場合など、さまざまな要因が挙げられています。
心臓弁膜症の症状は、障害された部分によって異なりますが、僧帽弁の場合ですと、呼吸困難や、肺がうっ血したりする症状が見られます。血液を左心房から左心室へ十分に送り出されなくなるため、動悸(どうき)が起こりやすくなるわけです。大動脈弁の場合は、症状が特別出ないまま、40歳頃になって突然発症することも少なくなく、動悸や息切れ、呼吸困難、不整脈などが見られてきます。
心臓弁膜症の治療においては、軽症の場合は安静にしたり塩分の摂取(せっしゅ)を控えたりして体調を整えることが大切ですが、重症の場合は、通常、手術を受けることが必要になります。手術は、障害された弁を人工弁に置き換える「弁置換(ちかん)術」が広く行なわれています。