病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
◇◇◇
前の記事「体を守る細胞が減っていく...「エイズ」治療は早期検査がカギ/やさしい家庭の医学(68)」はこちら。
抗生物質に耐性を持つ黄色ブドウ球菌
「MRSA」
●ペニシリンやメチシリンが効かない
「MRSA」は「Methicillin-resistant Staphylococcus aureus」の頭文字をとったもので、日本語では「メチシリン耐性黄色(おうしょく)ブドウ球菌」と訳されます。
かつて、黄色ブドウ球菌による肺炎の治療にはペニシリンという抗生物質が使われていましたが、頻繁(ひんぱん)に使用され続けた結果、ペニシリンが効かない菌が現れてきます。これを「耐性菌」と呼びます。
この耐性菌に対して、さらにメチシリンという新たな抗生物質が開発されたのですが、これにも抵抗性を持つ菌が出現してきました。これが、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」と呼ばれる菌になりました。
つまり、黄色ブドウ球菌とイタチごっこをしているうちに新たな耐性菌が生まれてしまったというわけです。
ただ、MRSAは健康な人が触れたとしても無害なものです。それが問題となるのは、手術を受けたあとの患者さんや重度の火やけど傷を負った患者さんなど、抵抗力の弱まった人に感染した場合で、このときには肺炎や髄膜(ずいまく)炎、敗血症などを引き起こすことがあります。
とくに、手術後の傷口から感染することが多いようで、重症化すると死に至ることもあります。
現在、MRSAに効く薬としてはバンコマイシンが挙げられていますが、それとて万能とはいえず、バンコマイシンに耐性のある菌の出現も確認されています。
また、日本の病院においては、MRSAによる院内感染が問題となった時期がありましたが、現在では手洗いの励行(れいこう)やさまざまな対策によって、その拡大に注意が払われています。
そのためにも、患者さんをお見舞いに訪れる人は、病院内に入るときは入口に備えられたアルコールで手を消毒するようにしましょう。