体を守る細胞が減っていく...「エイズ」治療は早期検査がカギ/やさしい家庭の医学

体を守る細胞が減っていく...「エイズ」治療は早期検査がカギ/やさしい家庭の医学 pixta_26214517_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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免疫に必要な細胞が減っていく病気

「エイズ」

●日本人の感染者数は約2万人にも

厚生労働省エイズ動向委員会の報告によると、2013年12月29日現在、日本国籍を有する人のHIV感染者・エイズ患者の数は、1万9034人(男性1万7860人、女性1174人)となっています。

これは、輸血などに伴う感染例なども含まれている患者数ですが、HIV感染者の感染経路を見てみると、男性の場合は同性間の性的接触、女性の場合は異性間の性的接触による感染が多いことがわかります。

さて、日本では1985年にはじめてエイズ患者が確認され、以降、社会問題としても扱われてきた「エイズ」ですが、そもそもどのような病気なのでしょうか。

エイズの説明をする前に、まずはHIVについて述べておきましょう。HIVとは「Human Immunodeficiency Virus」の頭文字をとった略語で、「ヒト免疫不全ウイルス」と訳されます。人の体を細菌やカビ、ウイルスなどの病原体から守ってくれる細胞であるTリンパ球やマクロファージなどに感染するウイルスで、HIVが細胞の中で増殖すると、免疫に必要なそれらの細胞が体内から徐々に減っていき、通常ならば感染しないはずの病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を併発していきます。この病気の状態をエイズといっているのです。

エイズは英語で「Acquired ImmunoDeficiency Syndrome」といい、その頭文字をとって「AIDS(エイズ)」と呼ばれています。日本語では「後天性免疫不全症候群」と訳されます。

エイズに感染するのは、粘膜《ねんまく-腸管・口腔内・膣(ちつ)など》や血管に達するような皮膚の傷からですので、性的感染、母子感染、血液感染が感染経路です。性的感染はHIV感染の中でも大部分を占め、出産時・母乳保育時の母子感染、輸血や、注射器による麻薬の回し打ちによる血液感染などもあります。HIVは、血液、精液、膣分泌液などに多く分泌されていますので、それらの体液が粘膜などに付着しないようにすることが重要です。

 


●HIVの感染経路

【接触感染】
精液、血液、膣分泌物などに含まれるHIVに、尿道や膣、口、肛門などの粘膜から感染する。なお、HIVは感染力がとても弱いため、感染者と生活をしても感染することはない。

【母子感染】
母親がHIV感染者の場合、産道や胎盤などを介して子どもに感染する。ただし、妊娠中から抗HIV薬を服用することや、帝王切開で出産するなどの対策を行なえば防ぐこともできる。

【血液感染】
注射針で覚醒剤などを回し打ちすることによって感染する。かつては輸血による感染することもあったが、現在では厳密な検査がなされている(ただし、感染する可能性もゼロではない)。


 

HIVに感染すると、感染初期→無症候期→エイズ発症期とたどります。感染初期は急性期ともいわれ、感染してから2~6週間の間に、50~90%の人に発熱や頭痛、喉頭(こうとう)炎、下痢などの症状が見られますが、これらはHIVに特有な症状ではないため、正確に感染状態を知るには検査を受けるしか方法はありません。現在、HIV検査は全国のほとんどの保健所で受けることができますし《匿名(とくめい)・無料》、エイズの治療には早期発見が何よりも重要です。

いまでは抗HIV薬によってウイルスの増殖を抑え、エイズの発症を極力防ぐことも可能となっています。ご自身がHIVに感染しているかどうか不安に感じたら、ぜひ保健所で検査を受けてみてはいかがでしょうか。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。


 

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』

(中原英臣[監修]/KADOKAWA)

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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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