適度な運動で「高血圧が改善」する理由を解説【国立障害者リハビリテーションセンター澤田先生が解説】

国立障害者リハビリテーションセンターなどは、ジョギング程度の軽い運動によって脳に適度な衝撃を与えることで、高血圧が改善するとの研究報告を発表。成果をまとめた論文が7月、国際科学誌に掲載されました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年9月号に掲載の情報です。

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高血圧とは

医療施設で測定した血圧値が、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の状態を高血圧といいます。

自宅で測る家庭血圧では、135mmHg以上または85mmHg以上が高血圧とされます。

上(収縮期血圧)140mmHg以上
下(拡張期血圧)90mmHg以上

※診療所や病院で測定した場合の高血圧の基準。日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』より。

軽い運動による脳への衝撃で高血圧が改善

研究では、高血圧のラット(ねずみ)を用いて、人の軽いジョギングに相当する運動時の脳の変化を測定。

その結果、足が着地する際、頭部(脳)に伝わる適度な物理的衝撃によって脳内の体液が流動。

すると、血圧調節に関わる細胞に刺激が加わり、血圧を上げるたんぱく質の量が低下することで、高血圧の改善効果が得られることが分かりました。

1日30分、週3回の運動が有効

適度な運動で「高血圧が改善」する理由を解説【国立障害者リハビリテーションセンター澤田先生が解説】 2309_P082_02.jpg人への研究では、座面が上下に動くいすを用いて、頭部への衝撃を再現する実験を実施。

1日30分、週3日、約1カ月で、高血圧改善の効果が認められました。

下記のような運動にも同様の効果があると期待されます。

・ジョギング
・速歩き
・自転車こぎ
・水泳
・水中歩行
・階段下り


適度な運動が高血圧の予防や改善に有効であることは知られていましたが、詳しい仕組みは分かっていませんでした。

今回の研究では、その理由の一つが解明されました。

研究チームによると、ラットの実験では、運動によって頭に刺激が加わることで、脳内の体液が動くなどして血圧が下がることを解明。

人の脳でも同様の効果があると考え、座面が上下に動くいすを制作。

20〜80代の高血圧の27人を対象に、検証を行いました。

「週3日、毎回30分いすに座ってもらい、軽いジョギングと同程度の衝撃を脳に加える臨床試験を約1カ月続けたところ、高血圧の改善効果が認められました。また、その効果は約1カ月持続しました」と、澤田泰宏先生。

日常生活の中で取り入れるなら、軽いジョギングや速歩き、水中歩行などでも同様の効果が期待できるといいます。

「速歩きは、いつもよりちょっと速い程度で十分です。1日10〜15分を目安に行えば、効果を期待できます。一度にまとめて行うのがつらい場合は、3分を10回など、断続的に行うのもいいでしょう」

軽い運動による効果は、運動を続けることで保たれると澤田先生。

「運動が苦手な人は階段を下りる、自転車に乗るということも効果的。無理せずに取り組んでください」

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>

国立障害者リハビリテーションセンター病院 臨床研究開発部 部長
澤田泰宏(さわだ・やすひろ)先生

1985年東京大学医学部卒業。整形外科医として勤務後、細胞生物学者として国内外で活躍。「適度な運動がなぜ健康にいいのか」をテーマに研究。2014年より現所属。

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