ウェルネス総合研究所は4月、「ガンマ波テクノロジー 認知機能ケア」と題した発表会を実施。脳波やガンマ波の研究者、ガンマ波を用いた認知症予防に取り組む企業らが、最先端の動向を紹介しました。今回は、杏林大学名誉教授の古賀良彦(こが・よしひこ)先生に「音と認知症の関係」についてお聞きしました。
音と認知症の関係
認知症リスクを低減する方法として、音や光、香りなどによって五感を刺激するケアがあります。なかでも、耳から入った音が脳への刺激になることから、音による認知症予防が注目されています。日常生活になじみやすく、自然と行いやすいのも◎。
聴く、見るなどの刺激を受けると、脳内で複数の神経細胞が活動して情報処理を行います。この過程で脳波が発生。
脳の状態によってさまざまな周波数が発生
デルタ波
周波数:<4Hz
脳の状態:深い睡眠状態
シータ波
周波数:4-7Hz
脳の状態:深い瞑想状態や眠気など
アルファ波
周波数:8-13Hz
脳の状態:リラックス時、閉眼時
ベータ波
周波数:14-30Hz
脳の状態:能動的で活発な思考、集中状態、20Hz以上は緊張状態
ガンマ波
周波数:30Hz<
脳の状態:興奮、知覚や意識
出典:マクニカHP「 脳波とは何か?」を一部、編集部で改変
脳の活動によって発生する脳波には、上記のようにさまざまな周波数があります。周波数とは、脳波が振動する回数を示すもので、Hz(ヘルツ)という単位で表されます。どんな脳波が発生しているかで、そのときの脳の状態が分かります。
ガンマ波が認知機能の改善に役立つ!?
近年の研究によると、アルツハイマー型認知症の人に、40Hz周期の音で刺激を与えると、脳内にガンマ波が発生し、アミロイドβたんぱく質が低減。認知機能の改善に役立つと期待されています。
「ながら予防」できる健康機器も
テレビの音を40Hzのガンマ波サウンドに変調し、家庭で使えるスピーカーが4月より発売。他にも、ガンマ波サウンドを活用した認知症への取り組みが、さまざまな企業で進行中です。
認知症の患者の約7割は、アミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が脳に蓄積するアルツハイマー型といわれています。
「アミロイドβとは脳のゴミのようなもので、蓄積することで神経変性が進行し脳が萎縮します」と、古賀良彦先生。
認知症の予防には、五感への刺激が有効と分かっており、なかでも聴覚刺激の研究に注目が集まっています。
「マサチューセッツ工科大学が行った実験では、マウスに40Hz(ヘルツ)周期の音を聞かせることで、ガンマ波が脳の聴覚野と海馬に発生。アルツハイマー型認知症と関連の深いアミロイドβたんぱく質が減少し、目的地へ向かう・戻るといったときに機能する"空間記憶"の改善がみられました。2022年には人にも同様の実験を行い良い結果を得ています」
ガンマ波は、認知(=情報処理)の過程で増加する脳波。アルツハイマー型認知症の人の場合、健康な人と比べて認知の過程で生じるガンマ波が減少していることが分かっています。
「40Hz周期の継続音を聞かせることで、脳内にガンマ波を生じさせれば、認知機能が改善する可能性があると推測できます」
すでに複数の企業がガンマ波利用に動いており、日常生活の中でガンマ波サウンドを聴くことができるテレビスピーカーも登場しています。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子