ふくらはぎのむくみにの原因はさまざま。生活習慣病が引き起こすものもあり、なかには心臓や腎臓の病気の隠れていることも。今回は、東邦大学医療センター 大森病院 循環器センター(心臓血管外科)主任教授の藤井毅郎(ふじい・たけしろう)先生に、「むくみを防ぐ生活習慣」についてお聞きしました。
【前回】心臓血管外科医の藤井先生に教わる「危険なむくみ」は原因を知って早めに治療を!?
生活習慣病の改善と体をまめに動かして予防
心臓弁膜症による慢性心不全では、手術により変性した弁を治したり(弁形成術)、取り換えたり(弁置換術)することが一般的です。
慢性腎臓病では、食事療法や薬による治療が行われます。
「心臓の弁は動脈硬化などの影響を受けやすいため、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病を治し、日ごろから予防することも大切です。これは、腎機能を守ることにもつながります」とも、藤井先生は話します。
一般的なむくみ予防として有効なのは、こまめに立ったり座ったりして体を動かすこと。
こうすると、下肢の筋肉のポンプ機能を働かせることができます。運動習慣も予防法の一つ。ウォーキングや速歩といった有酸素運動は心臓のポンプ機能を強化し、生活習慣病の改善を後押しします。また、立ち仕事の際には、下肢のポンプ機能をサポートする弾性ストッキングを着用することも、対策につながります。ただし、むくみ予防のために水分を控えると、腎機能にダメージを与えるので注意しましょう。こまめに水分を摂りつつ、体を動かすことが大切です。
むくみは、エコノミークラス症候群(下参照)が関係していることもあり、この場合は命に関わる病気につながる可能性もあります。「たかがむくみ」と侮らず、体の不調を表すサインかもしれないことを覚えておきましょう。
達人のツボ
《下肢に血流が滞留して起こるエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)》
長時間の座りっぱなしなどで脚の深部静脈に血液が滞留すると、血液が固まって血栓が生じやすくなります。血栓で血管が詰まると片方の脚が異常にむくみ、痛みも感じます。その血栓が血流に乗って肺動脈に到達して血管が詰まると、「肺塞栓症」という命に関わる病気を引き起こします。
長時間、同じ姿勢のままでいるのは危険です。体をこまめに動かすことと、水分を補給することが予防につながります。
「むくみ」を防ぐ生活習慣
減塩・禁煙を心がける
動脈硬化を促進させる高血圧の最大の予防法が、減塩。日本高血圧学会が高血圧の人に推奨するのは1日6g未満です。喫煙も大敵。禁煙外来の受診などで禁煙に取り組みましょう。
運動を習慣化し、外出の機会を増やす
外出の機会を増やすため、運動の他、地域の活動やサークルにも積極的に参加を。自宅で孤独に過ごすと不規則な生活や運動不足、食べ過ぎを招き、生活習慣病の一因となります。
足を高くして寝る
長時間の立ち姿勢などで脚がむくんでしまったときには、心臓よりも少し高い位置に足を置いて寝ると、血流がよくなって脚のだるさが和らぎ、むくみが解消されやすくなります。
ふくらはぎをマッサージする
一般的なむくみの場合、「第2の心臓」と称されるふくらはぎをマッサージすると血流がよくなり、症状が和らぎます。足首からふくらはぎに向かって1回10分程度、行いましょう。
主な治療法
腎臓の病気が原因の場合
慢性腎臓病の場合は、塩分制限やたんぱく質制限などの食事療法と、薬による治療が行われます。これまで腎不全は治療薬が乏しく、進行したら人工透析(透析療法)を適用することが大半でしたが、近年、腎不全にも心不全にも効果的な「SGLT2阻害薬」が登場し、注目を集めています。この薬によって腎機能の低下が抑えられると期待されています。
心臓の病気が原因の場合
原因や病状により治療法が異なります。薬物治療の場合は、尿を出しやすくする利尿薬、血圧をコントロールする降圧薬、不整脈を抑える薬などの処方が一般的。心臓弁膜症の場合は、弁を置き換えたり、正しく閉じるように形成し直す手術が第一選択肢に。不整脈の場合は、脈が乱れる原因(心房細動など)により手術などの方法が異なります。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史