心臓血管外科医の藤井先生が指南!「危険なむくみ」は原因を知って早めに治療を

ふくらはぎのむくみにの原因はさまざま。生活習慣病が引き起こすものもあり、なかには心臓や腎臓の病気の隠れていることも。今回は、東邦大学医療センター 大森病院 循環器センター(心臓血管外科)主任教授の藤井毅郎(ふじい・たけしろう)先生に、危険な「むくみ」の原因についてお聞きしました。

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「むくみ」を引き起こす生活習慣

● 塩分の摂り過ぎ
● 水分やアルコールの摂り過ぎ
● 運動不足による筋力の低下
● 喫煙
● 体の冷え
● 不規則な生活
● 立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢が多い など

上記の他、心臓や腎臓に病気がある場合も「むくみ」を起こす場合があります。

一晩寝ても治らないなら病気のサインの可能性が

夕方になると脚が「むくむ」といったことはよく起こりがちです。靴が窮屈に感じることもあるでしょう。むくみはなぜ起こるのでしょうか。

「血管からしみ出た水分が細胞間(細胞と細胞の間)にたまった状態が『むくみ』です」と、藤井毅郎先生。

心臓から送り出された血液は、動脈を通って酸素や栄養素などを全身へ運びます。そして静脈を通って二酸化炭素や老廃物を回収し、肝臓や腎臓などを経て心臓に戻る仕組みがあります。足先へ行った血液は、心臓へ戻るときに、立った状態や座った状態だと重力に逆らわなくてはなりません。下肢の筋肉が、血液を上方向に流すポンプ機能の役割を果たすのですが、運動不足などでその力が弱いと血液がスムーズに流れず、血液が下肢に滞留することで血管の外へ水分がしみ出し、むくみとなるのです。アルコールを摂り過ぎた翌朝といった、体内の水分が過剰に多い場合も、顔などがむくみます。

「一般的なむくみは一晩寝れば治ります。足が心臓よりも高い位置にあれば、ふくらはぎのポンプ機能が弱くても、静脈の血液は心臓の方へ流れるからです。しかし、一晩寝てもむくみが治まらない場合は、血流が悪くなっている以外に、他の病気が潜んでいる可能性があります」と、藤井先生は注意を促します。

一晩寝ても治まらないむくみの原因で最も多いのは、慢性心不全、腎機能低下の2つです。慢性心不全では全身の血流が悪くなり、腎機能低下では体内の水分調節ができなくなることが、むくみにつながるといいます。


「むくみ」が起こる仕組み

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一晩寝ても治まらない場合の主な原因

《腎臓に病気がある》
慢性腎臓病、急性腎炎、ネフローゼ症候群など

尿を作りにくくなるなど、体内の水分調節に障害が発生。尿にたんぱくが出るネフローゼ症候群では、血液中のたんぱくが減ることにより水分が血管外にしみ出てむくみます。

むくみ以外の症状
・むくんだ部分を指で押しても元に戻らず、へこんだままになる
・体重が2~3kg増える
・尿の出が悪い

《心臓に病気がある》
慢性心不全、心臓弁膜症、不整脈など

心臓に何らかの病気があることが原因で心臓のポンプ機能が著しく低下すると、全身に血液を十分に送ることができなくなり、血流が停滞してむくみを起こしやすくなります。

むくみ以外の症状
・呼吸が苦しい、息切れや動悸がする
・胸痛がある
・倦怠感がある
・脚がつる

このような症状を感じたら、循環器内科や腎臓内科の専門医がいる医療機関を受診しましょう。


60歳前後に多い主な原因は慢性心不全

慢性心不全は、60歳前後の女性に多く見られ、心臓のポンプ機能が低下します。最大の原因は生活習慣病です。

「慢性心不全の要因には不整脈などがありますが、読者世代に多いのが『心臓弁膜症』です。自覚症状に乏しいため、知らない間に心臓弁膜症になり、むくみが生じることがあります」と、藤井先生は警鐘を鳴らします。

心臓には4つの弁があり、送り出した血液が逆流しないように開閉する仕組みがあります。

この弁がきちんと閉じない、または弁が変性して開かないのが心臓弁膜症です。弁の機能が低下することにより心臓から血液をうまく送り出すことができず、血液が滞留しやすくなってしまいます。心臓弁膜症は心臓が痛むなどの自覚症状はなく、心電図検査では異常が見つかりません。

風邪などで病院へ行ったときに、聴診器を当てた医師から「心臓に雑音がある」と指摘され、検査の末、診断されるというのがよくあるパターンです。

腎機能低下では、腎臓は尿を作る臓器なので、機能が低下すると尿がうまく作れず、体内の余分な水分、塩分を排出できなくなります。

同時に、血管内で水分を保つ働きを持つたんぱく質が尿中に排出されると、血管内で水分をため込む力が弱くなって血管外に水分がしみ出し、全身がむくむ原因となります。

「心臓弁膜症の症状は、息切れ、倦怠感、冷え性など、更年期の症状と重なるため、分かりづらいですが、放置すると腎機能も低下する『心腎連関症候群』になることも。むくみが治まらないときは循環器内科や腎臓内科を早めに受診しましょう」と、藤井先生はアドバイスします。

一晩寝ても治まらないむくみに加え、食事量は同じなのに体重が増えた、尿が出にくいといった症状が伴うときも、早めに医療機関を受診することをすすめています。

 取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

東邦大学医療センター 大森病院 循環器センター(心臓血管外科)主任教授
藤井毅郎(ふじい・たけしろう)先生

1990年、東邦大学医学部卒。医学博士。カナダのトロント総合病院勤務などを経て2022年より現職。心筋梗塞や心臓弁膜症などの手術を得意とし、慢性心不全にも精通する心臓血管外科医。

この記事は『毎日が発見』2023年6月号に掲載の情報です。

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