脳梗塞のリスクが約5倍になり、認知症にもつながる「心房細動」。妹尾恵太郎先生が解説

オムロン ヘルスケア株式会社と秋田県薬剤師会は、2022年6月より心電計付き上腕式血圧計を用いて心房細動を早期発見する取り組みを実施しています。薬局で心電図を記録、必要に応じて医療機関への受診をすすめます。今回は、京都府立医科大学 不整脈先進医療学講座 講師の妹尾恵太郎(せのお・けいたろう)先生に「薬局で受けられる心房細動の検査」についてお聞きしました。


脳梗塞の原因の一つと言われる心房細動の早期発見と治療につなげることを目的に始まった今回の取り組み。

調剤薬局利用の際、希望に応じて薬局に設置している心電計付き上腕式血圧計で心電図を記録、心房細動の可能性を確認した場合は、薬剤師が医療機関への受診をすすめます。

「心房細動になると、心房の中で血液がよどみ、血栓ができて、それが脳に飛ぶと脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こします。脳梗塞を起こすと、たとえ一命を取り留めたとしても、重い後遺症が残る可能性も少なくありません」と、妹尾恵太郎先生。

他にも、心房細動には心不全の合併、認知症の発症リスクが上がる、生活の質が落ちるなど、さまざまなリスクが。

それだけに早期発見が重要だと言います。

「心房細動が発見された場合、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を投与することで、脳梗塞のリスクを60%以上低減できます。抗凝固薬は1日でも飲み忘れると脳梗塞のリスクが上がるので、内服の継続が重要です」

現在、全国約400カ所の調剤薬局で同様の取り組みを実施中です。

軽い息切れや動悸などがある方で、近くに実施している薬局がない場合は、医療機関で心房細動の可能性がないか相談してみましょう。


心房細動とは

脳梗塞のリスクが約5倍になり、認知症にもつながる「心房細動」。妹尾恵太郎先生が解説 2305_P090_01.jpg脳梗塞のリスクが約5倍になり、認知症にもつながる「心房細動」。妹尾恵太郎先生が解説 2305_P090_02.jpg

心房内に流れる電気信号の乱れによって起きる不整脈の一種で、心房がけいれんしたように細かく震え、血液をうまく全身に送り出せなくなる病気。症状は、動悸、めまい、つかれやすさなどがありますが、自覚症状のない人も4割程度います。

脳梗塞のリスクが約5倍!

心房細動があると、心臓に血の塊(血栓)ができやすくなります。血栓が血流にのって脳に運ばれ、血管をふさぐと脳梗塞を起こします。正式には心原性脳塞栓症と呼ばれ、脳梗塞全体の2割以上を占めています。心房細動の人はそうでない人と比べて脳梗塞発症のリスクが約5倍高いというデータもあります。

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心房細動が脳梗塞を引き起こす仕組み(心原性脳塞栓症)

心房内にできた血栓が、血流にのって脳に運ばれ、脳の太い血管に詰まり、脳梗塞を引き起こします。

心房細動になりやすい人は?

●心臓由来の原因
心不全、高血圧、狭心症、心筋梗塞、弁膜症

●その他
加齢、肥満、糖尿病、飲酒や喫煙の習慣、睡眠時無呼吸症候群、ストレス、甲状腺機能亢進症


早期発見には?

●自分で脈を測る

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手首に人さし指、中指、くすり指を並べて当て、1分間脈を数える。1分間に60~80回、一定リズムが正常。

●心電計付き血圧計を活用

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血圧測定と一緒に心電図を記録できる心電計付き上腕式血圧計。全国の提携薬局で、無料で計測を実施中。

他に、スマートウォッチや家庭用心電計の活用も有効。また、軽い息切れや動悸の症状を見逃さないことも大切。

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>

京都府立医科大学 不整脈先進医療学講座 講師
妹尾恵太郎(せのお·けいたろう)先生

滋賀医科大学卒業。心臓病センター榊原病院循環器内科、心臓血管研究所付属病院循環器内科、康生会武田病院不整脈治療センター医員などを経て、2020年より現職。

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この記事は『毎日が発見』2023年5月号に掲載の情報です。

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