心筋梗塞や心不全の前兆となることも! 命に関わる危険な「不整脈」の見分け方

心臓病のサインや心筋梗塞、心不全の前兆となることもある不整脈。今回は、東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 教授の中村正人(なかむら・まさと)先生に「不整脈の原因や種類」についてお聞きしました。

心筋梗塞や心不全の前兆となることも! 命に関わる危険な「不整脈」の見分け方 2301_P078_01.jpg

「不整脈」の主な原因

□ 加齢

□ 心臓の病気
心筋梗塞、心筋症、心不全、心臓弁膜症など

□ その他の病気
高血圧、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの重い肺の病気、甲状腺の病気など

□ 生活習慣
ストレス、過労、睡眠不足、喫煙、アルコールやコーヒーの摂り過ぎ、肥満など

□ 薬による副作用
一部の抗うつ薬、一部の降圧薬、抗不整脈薬など

「不整脈」の自覚症状としては、ふらつき、胸の違和感、失神などがあります。

1分以上もドキドキ危険な不整脈とは

最近、心臓が急にドキドキするようなことはありませんか?

部屋で静かに過ごし、激しい運動を行ったり、強いストレスを感じたりするような場面ではないのに、動悸がするように感じると、「脈が乱れた不整脈かしら?」と心配になりますね。

不整脈は心臓病の危険なサインとなることがあります。

いったいどのようなものなのでしょうか?

「心臓は、収縮して拡張する動きを繰り返しています。この拍動(心拍)を強く感じることを『動悸』といいますが、動悸イコール不整脈ではありません。不整脈にはいろいろなタイプがあり、感じ方にも個人差があります。危ない不整脈とそれに関係する動悸を見逃さないことが大切です」と中村先生は話します。

心臓は規則正しく拍動を繰り返し、そのリズムが血管の動脈に伝わって脈拍となります。

不整脈とは、この脈拍が乱れた状態をいいます。

正常な脈拍は、安静時で1分間に約60~100回が目安。

個人差はありますが、1分間に100回を超える脈拍を「頻脈」、50回以下を「徐脈」、さらに、一定のリズムが乱れて脈拍が跳ぶような状態を「期外収縮」と称します。

「動悸がすると『頻脈』だと思われがちですが、実際は脈拍が正常なことも少なくありません。動悸がして脈拍が速い、あるいは脈拍が跳び、胸が痛いときには、心筋梗塞や心不全など危険な心臓病が原因となっていることがあります。1分以上の胸痛が続いて脈拍が速いときには、注意しましょう」と、中村先生。

心臓がドキドキして息苦しい感じがしても、数秒後にすぐに治まってしまうときは、危険な不整脈ではない可能性が高いそうです。

逆に、全く無症状なのに知らぬ間に不整脈が起こり、心不全による意識不明の重篤な状態や、脳梗塞を引き起こすこともあるので注意が必要です。

「不整脈」の種類は大きく分けて3つ

《心房細動とは?》
心筋梗塞や心不全の前兆となることも! 命に関わる危険な「不整脈」の見分け方 2301_P079_01.jpg心房の電気信号が乱れることにより、心房がけいれんしたような状態になること。重篤な脳梗塞の原因にもなり、長期間にわたり連続して起こることで心不全にもつながります。

心筋梗塞や心不全の前兆となることも! 命に関わる危険な「不整脈」の見分け方 2301_P079_02.jpg脈拍が異常に速くなる不整脈。主な原因は心房細動。心臓の右上部にあたる右心房にある「洞結節」という部位から出される、心臓を動かす電気信号の乱れによって起こります。

主な症状...動悸、胸の痛み、失神など

心筋梗塞や心不全の前兆となることも! 命に関わる危険な「不整脈」の見分け方 2301_P079_03.jpg

脈拍が異常に遅くなったり、間隔が長くなったりする不整脈。加齢により心臓のポンプ機能が低下した場合にも生じ、全身への血液供給が滞りやすくなると命に関わることも。

主な症状...息切れ、だるさ、めまい、失神、心不全など

心筋梗塞や心不全の前兆となることも! 命に関わる危険な「不整脈」の見分け方 2301_P079_04.jpg

心拍は一定のリズムですが、ときどき外れるタイプ。健康診断の心電図検査でも発見されやすく、動悸の原因にもなりますが、心臓には問題がないことが多い不整脈です。

主な症状...動悸、胸の不快感など

頻脈の心房細動は脳梗塞を引き起こす

「危険な不整脈では、『頻脈』がサインになっていることがあります。最も多い原因は心房細動です。個人差がありますが、心臓がドキドキして動悸を感じる人もいます」と中村先生は指摘します。

心臓は4つの部屋に分かれていて、上部を心房、下部を心室といいます。

上部の心房の電気信号が乱れてけいれんしたようになり、拍動が300~600回も起こるのが『心房細動』です。

下部の心室の中で電気信号が乱れるものは『心室細動』といい、命に関わる事態を招きます。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 教授
中村正人(なかむら・まさと)先生
1982年、東邦大学医学部卒。専門は冠動脈血管内治療、動脈硬化症など。東京大学医学部内科学講座や三井記念病院、米国留学などを経て2009年から現職。日本心血管インターベンション治療学会第3代理事長も務めた。

この記事は『毎日が発見』2023年1月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP