加齢とともに多くの方が緑内障で悩まされています。しかし、生活習慣の改善で対策を行うことができます。今回は、二本松眼科病院 副院長の平松 類(ひらまつ・るい)先生に、「緑内障の生活習慣の新常識」についてお聞きしました。
【前回】最新の手術や正しい目薬の差し方etc. 医師が教える「緑内障の新常識」
生活習慣の新常識
たんぱく質をきちんと摂る
肉などのたんぱく質を摂っている人の方が緑内障になりにくいという研究があります。
「たんぱく質が不足すると体をつくる基本構造がもろくなり、視神経もダメージを受けやすくなると推測されています」(平松先生)。
栄養バランスは保ちながら、普段の食事に取り入れるようにしましょう。
白砂糖、白米、小麦粉を摂り過ぎない
「糖尿病でなくても、血糖値が高い人は眼圧が高くなることが分かっています」(平松先生)。
血中の糖分が多いと、血管や血流に障害が出やすくなり、視神経がダメージを受けやすくなります。
精製した砂糖や小麦粉のほか、白米なども血糖を上げやすいので、控えめに。
水分は摂り過ぎない
急激に水分を摂ると、眼球の中の房水の量が増え、眼圧が上がるので注意しましょう。
ただし、水分を控え過ぎると血流が悪くなってしまいます。
「コップ1杯程度の水なら普通に飲んでOK 。500mlの水なら、1~3時間ほどかけて飲むとよいでしょう」(平松先生)。
ブルーベリーでは治らない
ブルーベリーに含まれる「アントシアニン」は全身の加齢を防ぐ作用はあるといえますが、緑内障を治す効果は期待できません。
目によいといわれる「ルテイン」は目の健康全般におすすめですが、「食品に頼るより、まずは目薬を正しく使うことが大切です」(平松先生)。
目を温めても眼圧は下がらない
緑内障では目薬の副作用で目の表面が荒れやすいので、眼精疲労やドライアイの改善のためなら、目を温めるのはOK 。
「場所を問わず、手軽に目を温めるなら『パームアイ』(上図)がおすすめ。手のひらを軽く10回こすり合わせ、カップ状にして目の周りを包みます」(平松先生)。
金管楽器の演奏や水泳は注意が必要
トランペットやサックスなどの金管楽器は、強く吹くことで目に圧力をかけるので、緑内障末期の人などはやや注意。
水泳は、ゴーグルを使うと着用時の締め付けにより眼圧が上がることも。
「ゴーグルはなるべく大きめで、圧力が集中してかからないものを選びましょう」(平松先生)。
ウォーキングは時速6〜8km、約20分が効果的
ウォーキングなどの有酸素運動は血流を促進し、視神経のダメージを防ぐのに効果的。
運動習慣のある人の方が緑内障が進行しにくいことも分かっています。
「最低でも週1回、できれば週3回30分の運動を」(平松先生)。
頭を下にするヨガのポーズなどは眼圧を上げるので避けて。
横になって本やスマートフォン を見ると眼圧が上がる
緑内障になっても、読書をすることは問題ありませんが、座った体勢で読みましょう。
寝ながら読書をすると眼圧が上がることが分かっており、スマートフォンでも同様です。
また、本の文字が読みづらい場合は文字や判型が大きい「大活字本」などがおすすめ。
寝るときは角度が15度程度になる枕を選ぶ
睡眠中は必ず眼圧が高くなります。
これは「横になって本やスマートフォンを見ると眼圧が上がる」(上)と同じく、体が横になると頭と体が水平になるので水分が頭の方にも流れ、圧力がかかるからです。
それを防ぐには、頭の位置が角度15度程度に少し上がる枕を。
うつ伏せ寝をしたり、目が枕に当たったりすると眼圧が上がるので要注意です。
筋トレはやり過ぎない
激しい筋力トレーニングや息を止めて行う筋力トレーニングは、つい力が入って眼圧が急
激に上がることも。
「緑内障の症状が深刻でない場合は、1日に1セット10回×3セット程度のスクワット、腹筋、腕立て伏せなら、特に気にする必要はありません」(平松先生)。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/添田あき