緑内障の治療法にはいくつかあります。まずは目薬で眼圧をさげるのですが、意外と正しい目薬のさし方をしているのはごくわずかだそうです。今回は、二本松眼科病院 副院長の平松 類(ひらまつ・るい)先生に、「緑内障の手術や正しい目薬の差し方」についてお聞きしました。
【前回】40歳以上は2年に1回の検査が必要! 心臓病のリスクにもつながる!「緑内障の新常識」
[検査と治療法の新常識]
手術をすると見えにくくなる可能性 もある
緑内障の手術をしても、視野は広がりません。
むしろ、目がゴロゴロしたり、中心視野が欠けたりすることも。
「緑内障の手術は、症状が進行している人に行うもの。『失明をなんとか食い止めるための手段』と理解した上で受けることが大切です」(平松先生)。
負担の少ない最新の手術法がある
比較的簡単で、目へのダメージが少ない手術法として知られるのが「MIGS(ミグス/低侵襲緑内障手術)」です。
現在、日本で最も多く行われており、所要時間は約10分。
このうちの「iStent(アイステント/iStent inject W)」は、白内障手術と同時に行うことで保険適用に。
緑内障なのに白内障の手術をすることがある
白内障は、白く濁った眼球の水晶体を薄い人工レンズに交換する手術で改善しますが、こ
れにより房水の流れがよくなったり、視神経への負荷が軽減することで、眼圧上昇のリス
クを減らすことができます。
初期の白内障でも受けられ、手術の負担も一度で済みます。
目薬、手術、レーザー治療の種類は人によって異なる
緑内障の治療は、まず目薬で眼圧を下げるのが基本。
改善されない場合は、手術や目を切開しないレーザー治療を検討します。
緑内障のタイプや進行具合によって各々の選択肢は多岐にわたり、副作用も異なります。
「納得する治療方針を医師と相談しながら考えましょう」(平松先生)。
主な目薬
・キサラタン...房水の排出促進。効果が最も高く、点眼は1日1回。まつげが伸びるなどの副作用も。
・エイベリス...房水の排出促進。点眼は1日1回で、効果も高い。副作用に充血、目の痛みなど。
・アイファガン...房水の排出促進・産生抑制。点眼は1日2回で効果は中程度。副作用に充血など。
主な手術
・トラベクレクトミー...目に小さな穴を開け、房水の出口を作る。最も高い効果。40~50分。
・トラベクロトミー...房水の流れが悪い部分を切開して流れをよくする。安全性が高い。約30分。
・iStent(iStent inject W)...上記参照。眼内の「シュレム管」にチタン製チューブを埋め込む。
主なレーザー治療
・SLT...最も一般的な方法。「線維柱帯」にレーザーを当てて房水の流れをよくする。5~10分。
・毛様体光凝固術...「毛様体」にレーザーを当てて房水量を抑える。効果大だが副作用も。5~20分。
95%の人が目薬のさし方 を間違えている
正しいさし方
[点眼する前の注意]
手をよく洗う
まずは手をよく洗い、汚れや雑菌を落として清潔にします。
目薬のふたは容器側の面を下に置かない
ふたの容器側の面がテーブルなどにつくと、感染症の原因になります。
(1)人さし指で下まぶたを引きながら目薬を1滴さす
点眼口の先がまつげや眼球に当たると、雑菌が増える原因になるので、当たらないように注意しながら、目薬を1滴さします。
【ポイント!】さすのは1滴で十分。多くさしても効果は上がりません
(2)さした後は目を閉じて1分程度、目頭を押さえる
人さし指で目頭を押さえて、目薬が目から流れるのを防ぎます。まばたきをすると、涙が分泌されて目薬が流れてしまうので注意。
【ポイント!】パチパチするのは逆効果。効果が薄まります
さし忘れたときは
⇒気付いた時点で点眼を。ささないままでいるのは禁物です。
取材・文/岡田知子(BLOOM) 写真/PIXTA イラスト/添田あき