目の疲れや痛み、乾き、ゴロゴロ感、まぶしさ、涙目などさまざまな不快感が起きる目の疾患、ドライアイ。慢性の頭痛や肩こり、倦怠感などを引き起こすこともあり、生活の質を低下させます。今回は、伊藤医院副院長の有田玲子(ありた・れいこ)先生に「ドライアイの原因や治療法、セルフケア」について教えてもらいました。
主な原因
涙のなかの水分の分泌が減少している
涙が乾くのを防止するための脂の分泌が減少している
主な治療法
有効な目薬を正しく点眼する
マイボーム腺から脂を出しやすくする運動やケアをする
涙の三層構造とマイボーム腺
(1)油層
いちばん外側の層で、水分の蒸発を防ぐ。脂はマイボーム腺で分泌される
(2)水層
涙の主成分。中間の層で、角膜や結膜に栄養分を送る
(3)ムチン層
目にいちばん近い層で、涙が流れ落ちないように安定性を保つ
ドライアイは、目の表面を潤す力が低下して、目の疲れや痛み、乾き、ゴロゴロ感、まぶしさ、涙目などさまざまな不快感が起きる目の疾患です。
慢性の頭痛や肩こり、倦怠感などを引き起こす場合があり、生活の質を低下させます。
ドライアイには涙の水分が足りないタイプと涙の脂が足りないタイプがあり、大半が後者のタイプです。
加齢による女性ホルモンの減少やストレスなどが、マイボーム腺の異常(消失・短くなるなど)や脂の質の低下を招き、リスクを高めます。
他に下に挙げた生活習慣も要注意です。
改善のために市販の目薬を使う場合は、ドライアイを悪化させない防腐剤無添加のものを選びます。
ゴマ油など油分が配合された目薬もあるので試してみてもいいでしょう。
点眼のし過ぎは涙の栄養分を洗い流してしまうので、1回1滴、1日の点眼回数を守りましょう。
上まぶたに行き届くように、仰向けに寝て点眼すると効果的です。
緑内障など別の病気の目薬と併用する場合は、1時間空けます。
目薬に頼り過ぎず、下記のセルフケアを行うことも大切です。
涙に良い食材も積極的に取りましょう。
サバ缶や亜麻仁油などに含まれるオメガ3は涙の水分と脂分の両方を増やす効果があります。
これらを1カ月ほど試しても改善しないときは、眼科を受診します。
問診の他、涙の安定性とドライアイの重症度の検査を行います。
似たような病気にアレルギー性結膜炎や眼瞼けいれんがあり、治療法が異なります。
ドライアイの専門医(LIME研究会のホームページ参照)を受診することをおすすめします。
治療のポイントは、涙の不足成分を補充すること、涙の安定性を改善すること、炎症・摩擦を減らすことです。
ジクアス、アジマイシン、ムコスタなど、症状に合った目薬が処方されます。
涙が蒸発しやすくなる生活習慣
当てはまるものが多いほどリスクが高い。逆にこれらに気を付ければ、予防になる。
□アイラインを入れている
□コンタクトを使っている
□目薬を1日に7回以上さすことがある
⇒涙の保湿ベール(油層)を壊す
□肉が好きでよく食べる
□揚げ物やスナック菓子などをよく食べる
□日頃、運動をしていない
□一日中家から出ない日がある
⇒涙液の脂がドロドロになる
□冷え性である
□湯船につからずシャワーで済ますことが多い
⇒体が冷えて正常な涙が出にくくなる
□ 1日3時間以上スマホやパソコンを利用する
⇒まばたきが不完全で、涙の保湿ベール(油層)がつくれない
セルフケアでドライアイを改善!
まばたき運動(1日に5回)
まぶた付近の筋肉「眼輪筋」を鍛えて、マイボーム腺から脂を分泌しやすくする。
(1)2秒間、目を閉じる
(2)パチ、パチとまばたきを軽く2回
(3)ギューッと2秒間、目を閉じる
(4)パッと目を開いて下まぶたを上に引き上げてまぶしい目をする
(5)目尻と眉毛の間を指で押さえて「きつねの目」をしながら閉じようとする
目を温める(1日に朝晩2回、5分ずつ)
マイボーム腺の脂を溶かし、まぶたの血流を改善する。
●マイボーム腺の脂を溶かすには36度以上の温度が必要
●まぶたがぬれない温め方が最も効果的。蒸しタオルを使う場合は、ビニール袋に入れるか、乾いたタオルを巻いてから
まつげの根元を洗浄する(毎日の洗顔時など)
マイボーム腺の開口部の汚れを除去する。
●まつげの根元周辺を指の腹を使ってぬるま湯で優しく洗う。数十秒でOK
●市販の目元専用シャンプーを使うとさらに効果的。汚れを優しく絡めとれる泡タイプがおすすめ
●ゴシゴシこすると刺激を与えて逆効果
取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子