足の血管が浮き出る、ボコボコしている、むくみがひどい...。それらの症状は「下肢静脈瘤」が原因かもしれません。放置しておくと重症化する場合もある「下肢静脈瘤」ですが、軽症のうちはセルフケアで何とかなります! そこで今回は"血管の名医"である広川雅之先生の著書『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』をご紹介。自分の症状はセルフケアで治るの? 放っておくとどうなるの? 別の病気の可能性は? 「下肢静脈瘤」に関する疑問を名医が徹底解説します。
※本記事は広川雅之著の書籍『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』から一部抜粋・編集しました。
【前回】「下肢静脈瘤」の最新治療法! 「血管内治療」の仕組みを医師が解説
最新の血管内治療 ~グルー治療とは~
グルー治療は、熱を使わずに、瞬間接着剤で血管をふさぐ治療法です。
2019年に日本で健康保険が適用となり、低侵襲治療(患者さんの体への負担が少ない治療)として普及しつつあります。
ひざの下に1カ所局所麻酔を行い、エコーで観察しながら静脈に細い針を刺します。
針から細いカテーテルを入れて、足の付け根まで進めます。
カテーテルにグルー(医療用の瞬間接着剤)を注入するためのディスペンサーガンをつなげて、静脈内にグルーを押し出します。
ディスペンサーガンを1回引くと、接着剤が0.1ml押し出されるしくみになっています。
カテーテルの先端が深部静脈から5cm離れた位置にあることをエコーで確認したら、ディスペンサーガンの引き金を引き、1cm間隔で2カ所に接着剤を注入します。
同時にエコープローブというエコー機器の患者さんの体に当てる部分と手で皮膚の上から3分間圧迫します。
その後は3cmごとの接着剤注入と30秒間の圧迫を繰り返し、カテーテルの挿入部から5cm手前で最後の注入をしてカテーテルを抜けば終了です。
弾性包帯を巻く必要はなく、絆創膏を貼るだけです。
使用する接着剤の量は、平均で1~2mlとごく少量です。
グルー治療に使う道具
グルー治療に使う道具。静脈内に挿入したカテーテルからグルー(瞬間接着剤)を注入する。
グルー治療のしくみ
グルーを注入したら、皮膚の上からエコープローブで圧迫して静脈内を接着させる。
グルー治療が優れている点はいくつかあります。
まずは血管内焼灼術のように、広い範囲に局所麻酔を行う必要がないこと。
また、術後に弾性ストッキングを着用する必要もなく、運動や生活の制限がほとんどないのもメリットです。
治療当日から軽い運動をしたりお酒を飲んだり、仕事に戻ったりもできるなど、患者さんの負担が少なくてすむのです。
次に、合併症の心配が少ないことです。
血管内焼灼術の場合、静脈のまわりへの熱の影響で、神経障害が起こることがあります。
グルー治療は熱を使わないので、静脈のまわりへの影響がほとんどありません。
グルー治療の合併症としては、治療後1~2週間後に治療した部位の皮膚に赤みや腫れの出る静脈炎を起こす人がいて、痛みやかゆみがともなうことがあります。
原因は体内に異物が入ったことによる反応で、通常1~2週間で自然におさまります。
ただし、ごく一部の静脈炎は遅延型アレルギーによる場合があります。
重篤な場合はステロイド薬の内服や注入したグルーの切除が必要になります。
そのため、接着剤や接着剤の分解産物であるホルムアルデヒドのアレルギーのある人はグルー治療の対象外となります。
まつ毛エクステンションに使用する接着剤でアレルギーを起こした人や、シックハウス症候群、化学物質過敏症の人がそうです。
また、グルー治療は高額な治療機器が必要ないことから、トレーニングを受けた医師がいれば、レーザーや高周波治療装置を持っていない医療機関でも治療を行うことができます。
これまでは血管内治療が行える医療機関は大都市に限られていましたが、全国どこでも治療を受けられるようになるのです。