体のだるさ、食欲不振、イライラなど夏に起こるさまざまな症状を指す「夏バテ」。もちろんこまめな水分補給が大切ですが、冷たい飲み物の取りすぎは胃を弱らせてしまうことも...。今回は、千葉大学医学部附属病院 和漢診療科長・診療教授の並木隆雄(なみき・たかお)先生に「 夏バテに陥ってしまう3つの段階」についてお聞きしました。
セルフチェック
あなたは「夏バテ」になりやすいタイプ?
□ 暑いときには、冷たい水やジュースを飲むことが多い
□ 夏はエアコンの温度設定を、やや低めにしている
□ 夏は体力温存のため、あまり運動はしない
□ 暑い日には浴槽に浸からず、シャワーだけにすることが多い
□ 夏は寝苦しくなるので、少し睡眠不足だと思う
ひとつでも当てはまるものがあれば、「夏バテ予備軍」かもしれません。自律神経が乱れていると、夏バテを起こしやすくなります。イライラして眠れない、食欲がない、元気が出ないといった夏バテのサインを見逃さず、生活習慣の改善を。
胃腸の不調やのぼせ
コロナにも感染しやすい
蒸し暑い時期には、熱中症予防で「こまめな水分補給」が欠かせません。
友人とのおしゃべりも兼ねて、カフェなどに行って冷たい飲み物で喉を潤す機会も増えるでしょう。
しかし、そこに夏バテに至る落とし穴があります。
夏バテとは「体がだるい」「食欲がない」「イライラする」など夏に起こるさまざまな症状をいいます。
「冷たい飲み物のとり過ぎは、胃が冷えて弱ります。深部体温を冷やし過ぎると体力が失われて食欲が落ちるのです。夏バテで食欲がなくなるのは、冷たい飲み物で胃が冷え過ぎた結果といえます」と並木隆雄先生は話します。
高温多湿の状況では冷たい飲料が欲しくなりますが、飲み続けていると胃腸が悪くなるのです。
そのサインは舌が白っぽくなること。
食欲がなく鏡で見て舌が白くなっていたら、夏バテに陥る第1段階です。
そうとは知らず、さらに冷たいものをとり過ぎると、第2段階が待ち受けます。
「胃だけが冷えた状態では、その部分の温度を上げようとして、東洋医学でいう"気"が胃の周辺に集まってきます。気は生命活動のエネルギーで、上半身に集まった状態が続くと、のぼせたような感じになるのです」と並木先生。
胃の温度を上げようと集まってきた「気」で、のぼせたような状態になると、ボーッとして頭や顔も熱くなります。
冷まそうとしてさらに冷たいものを飲み、エアコンの効いた部屋で過ごせば、夏バテの状態に拍車がかかり、それが第3段階へつながります。
「胃腸の調子が悪く、頭がボーッとした状態でエアコンが効いた部屋に入ると、体はその温度に適応できません。温度差のストレスにさらされて自律神経が乱れ、ホルモンバランスも崩れて更年期の症状も悪化しやすいのです」と並木先生。
自律神経やホルモンバランスの乱れは、夏バテの症状をひどくすることに加え、体力の低下で感染症のリスクも高めます。
新型コロナ感染症にも注意が必要です。
《夏バテに陥ってしまう3つの段階》
第1段階:ちょっと軽めの不調
主な症状
・あまり食欲がない
・舌の表面が白っぽくなる
原因と対処法は
冷たい飲料のとり過ぎが原因。飲み物を常温かホットに換えましょう。胃を冷やす行為は避けて。
第2段階:やや深刻な不調
主な症状
・ちょっとのぼせたような感じがする
・いつも以上に冷たいものを飲みたくなる
原因と対処法は
胃を温めるため東洋医学でいう「気」が上半身に停滞した状態。軽い運動で自律神経を整えましょう。
第3段階:かなり深刻な不調
主な症状
・気力、体力が低下しているような感じがする
・めまいや貧血になる
原因と対処法は
夏バテが進行している状態。漢方薬の「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」などを活用しましょう。
夏バテの3段階の引き金になるのが「冷たい飲料」のとり過ぎです。
第1段階の不調を感じたら生活習慣の見直しを心がけましょう。
《今年の夏は暑くなりそう》
地球温暖化などの影響で今年7月の平気気温は平年並みか高いと予測されています。7月前半は梅雨がまだ明けていない地域もあるため、高温多湿による熱中症予防も大切になります。ただし、冷たいものをとり過ぎると夏バテの引き金になるので注意しましょう。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史