体のだるさ、食欲不振、イライラなど夏に起こるさまざまな症状を指す「夏バテ」。もちろんこまめな水分補給が大切ですが、冷たい飲み物の取りすぎは胃を弱らせてしまうことも...。今回は、千葉大学医学部附属病院 和漢診療科長・診療教授の並木隆雄(なみき・たかお)先生に「 夏バテを予防するためにやっておきたいこと」をお聞きしました。
【前回】「夏バテ」しやすいかセルフチェック! だるさや食欲不振だけではなく感染症のリスクも
運動と入浴などで暑さに強い体づくりを
「本格的に夏になる前から、冷たい飲料はなるべく避け、少しずつ暑さに強い体になる習慣を心がけることが大切です」と並木先生は話します。
暑さに強い体づくりのポイントの一つは、飲み物を常温もしくはホットにすることです。
また、自律神経の乱れを正すために運動習慣も欠かせません。
運動不足では、体温調節もうまくいかなくなります。
この状態で冷たいものを飲むと夏バテを後押しすることになるのです。
「運動をしましょうと言うと『無理です』とおっしゃる患者さんがいます。でも、ハードな運動は必要ありません。朝のラジオ体操、室内での足踏み・もも上げなど、ちょっとした体操を意識するだけで、自律神経に良い影響を与えて夏バテ予防に役立ちます」と並木先生はアドバイスします。
もう一つ、ぬるめのお湯(38度前後)にゆっくり浸かる入浴も、自律神経を整えるために良いそうです。
千葉大学大学院の共同研究では、週7回以上入浴する高齢者は、週0~2回と比較して、約3割、要介護認定のリスクが減少したことも分かりました。
夏バテ防止だけでなく、健康長寿にも入浴習慣は役立つ可能性があるのです。
ただし、持病がある人は、主治医に方法を確認した上で入浴しましょう。
「気が上半身に集まるとイライラして眠れないこともあります。日中を活動的に過ごし、ぬるめのお湯でリラックスして夜ぐっすり眠ることも大切です」と並木先生。
イラッとしたらレモン酸っぱい食材が役立つ
自律神経が乱れやすい更年期も、睡眠の妨げになることがあります。
冷たい飲み物によって"気"が上半身に集まると、イライラを後押しするのです。
この状態で睡眠障害になってしまうと、うつ病の引き金にもなるので注意が必要です。
眠れない状態が続くようならば、早めに医療機関を受診しましょう。
「漢方的な考えでは、イライラしたときにレモンのような酸っぱいものを食べると落ち着きます。レモンには、疲労回復に役立つクエン酸が含まれるので、夏バテ防止にもつながります。イライラしたら、レモンティーなどを飲むと良いでしょう」と並木先生はアドバイスします。
また、料理に旬の食材を取り入れることもおすすめです。
食べごろを迎えるゴーヤやキュウリ、スイカなどは、体内で不足しがちな水分を補い、利尿作用を持つカリウムを含んでいるため、尿と一緒に体内にたまった熱も排出してくれるそうです。
「肌に潤いがあると脱水を起こしにくいので、コラーゲンを含む鶏の手羽先や魚の煮こごりなども食べましょう。食事や生活習慣を見直しても夏バテになったら、漢方薬の『清暑益気湯』が役立ちます。専門医に相談しましょう」と並木先生。
上手に夏バテを退けて、快適に過ごしましょう!
《夏バテ体質「下半身型冷え性」とは?》
上半身にエネルギーの「気」が集まってのぼせた状態になると、下半身は「気」の循環が妨げられて血の巡りが悪くなります。上半身は暑いのに腰から下は寒いのが特徴です。少し体を動かし、ぬるめのお風呂に入るなど血の巡りを良くすることが改善に役立ちます。
夏バテを予防するためにやっておきたいこと
季節の食材を使った食事を
旬の食材には水分を補い余分な熱を放出するなど、健康に役立つ働きがあります。ただし、冷やし過ぎには注意しましょう。
冷たい飲み物は避け、常温のものを。白湯でもよい
夏バテの食欲不振やのぼせなどは冷たい飲み物が原因。夏でも温かい飲み物もとるように。
すき間時間に、ちょっとした運動を
「運動しなきゃ」と身構えず、家事の合間に、こまめに体を動かしましょう。
ぬるめのお風呂にゆったり浸かる
入浴は自律神経を整えるのに役立ちます。夏でもぬるめのお風呂にゆったり浸かりましょう。
その他に
ぐっすり眠ることも夏バテ予防になります。寝室環境を快適に整えて睡眠時間の確保を。
東洋医学の観点から
ツボ押しで体質改善
血流改善のツボ押しも夏バテ予防に役立ちます。気持ちが良いと感じるところは優しく、硬いところは血流が悪くなっているので、少し強めに。押す目安は5秒程度。
血海
ひざのお皿の上側の内側角から指3本分ほど上がったところ。
太渓
足の内くるぶしとアキレス腱の間の少しへこんだところ。下半身や腹部の血流改善につながる。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史