部位によっては、「5年生存率が主な女性のがんより低い」という調査結果が出ている骨折。その要因のひとつとなる骨粗鬆症について知り、骨を強くする方法を実践して未病のうちに防ぐ努力をしましょう。今回は、川崎医科大学 総合医療センター 産婦人科特任部長(特任教授)の太田博明(おおた・ひろあき)先生に「骨粗鬆症が引き起こす骨折」についてお聞きしました。
50歳の日本人女性が生涯に骨折する確率
背骨(脊椎椎体骨折):37%
太ももの付け根(大腿骨近位部骨折):22%
手首(橈骨遠位端骨折):17%
腕の付け根(上腕骨近位部骨折):10%
若いときの骨折とは違う!
主ながんより低い生存率
骨粗鬆症は骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
この骨折ですが、「骨が折れるだけ」と甘く見てはいけません。
「骨粗鬆症による骨折は、がんをもしのぐ命に関わるけがです」と、太田博明先生は警鐘を鳴らします。
「50歳の女性が起こす頻度の多い背骨と太ももの骨折は、生命予後(※)に関わる骨折です。背骨を骨折すると背中や腰が前傾になって肺や腸を圧迫し、呼吸不全や腸閉塞など身体機能に障害を引き起こすことがあります。太もも骨折後には永続的な能力障害、独歩不能などが起こることもあり、1年以内の死亡率は約20%にも至ります」
※病気や手術などの経過において、将来、生命が維持できるかどうかについての予測。
骨折すると...
5年生存率は主な女性のがんより低い!
背骨、大腿骨を骨折すると、5年生存率は主ながんよりも下に。この2つの平均5年生存率約31.2%はステージ3や4の進行がんにも匹敵します。がんと骨折の調査の手法・条件が異なるため、単純比較はできませんが、骨折が重大な症状であることが分かります。
出典がん:国立研究開発法人国立がん研究センター 2019年発表
骨折:Bliuc D et al. JAMA 2009
骨折してからでは遅い
未病のうちに防ぐ
日々の食事や運動などに気を付けることはもちろんですが、それでも発症するのが骨粗鬆症の特徴。
「骨粗鬆症は発症・進行しても自覚症状がなく、骨折して初めて気付く人も多い病気。検診で早期に発見することが大切です」と、太田先生。
もし骨粗鬆症と診断されたら、薬物治療も不可欠です。
「薬に頼りたくないという人も多いですが、食事や運動だけで治るという考えは間違い。治療には薬が必要で、さらに食事や運動の改善により効果が高まります。いまは骨粗鬆症と診断されていなくても、骨折のリスクが高い場合は予防を目的とした薬物治療を始めることもできます」
こんな人は特に注意!
●やせていて小柄な人
骨量が少ない他、体重が軽いため骨に重力がかかりにくく、骨細胞が活性化しません。
●朝食を摂らない人
1日に摂るべき栄養の3分の1が失われ、明らかな栄養不足に。栄養バランスも乱れます。
●骨粗鬆症による骨折の家族歴がある人
親子2代を研究した太田先生によると、母親の骨量が遺伝する確率は約60%にも上ります。
《その他の骨粗鬆症の主な原因》
- 閉経による女性ホルモンの減少
- バランスの悪い食事
- 運動不足
- 紫外線不足
- 骨の検診を受けない など
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/落合 恵