部位によっては、5年生存率が主な女性のがんより低いという調査結果が出ている骨折。その要因となる骨粗鬆症について知り、骨を強くする方法を実践して未病のうちに防ぐ努力をしましょう。川崎医科大学 総合医療センター 産婦人科特任部長(特任教授)の太田博明(おおた・ひろあき)先生に「自分でできる、骨を強くする方法」を教えてもらいました。
【前回】高齢者の「骨折」は命に関わる! 「骨粗鬆症」になりやすい人の特徴と主な原因
自分でできる骨を強くする方法
【食事】3つの栄養素をバランスよく摂る
骨の主成分となる栄養素「カルシウム」
牛乳
チーズ
カルシウムの吸収率が最もよいのが乳製品で、牛乳が約40%。小魚や干しえびなどは約30%、小松菜などの野菜は約20%の吸収率です。
腸でのカルシウムの吸収を促す「ビタミンD」
さけ
うなぎ
カルシウムが骨に沈着することも促進。太田先生は欠乏防止に1日11.6μgの摂取を推奨。さけは1切れ(80g)で約25.6μgと効率的に摂れます。
しなやかな骨を作る「たんぱく質」
牛肉
赤身のまぐろ
骨の成分であるコラーゲンのもと。太田先生は1日に体重1kgあたり1.2gの摂取をすすめています。体重50kgなら60gのたんぱく質摂取が目安。
さらに摂りたい4つの栄養素
骨にカルシウムを沈着させる「ビタミンK」
- ひきわり納豆
- 海藻 など
丈夫な骨を維持するのに必要な栄養素。納豆は特にひきわり納豆がおすすめ。その他、モロヘイヤ、パセリ、しそなどにも含まれます。
骨の健康を守る「マグネシウム」
- あおさなどの海藻
- アーモンド など
カルシウムと一緒に連携して骨の健康を守ります。わかめなどの海藻、ナッツ類、ほうれん草などの緑黄色野菜にも多く含まれます。
骨の形成を促進する「亜鉛」
- 牡蠣
- レバー など
骨が形成されるときに働く酵素の活性化に不可欠な栄養素。尿や発汗により多く失われるので注意。油揚げやカシューナッツにも。
骨密度を高める「カロテノイド」
- トマト
- にんじん など
天然の色素成分で、β-カロテン(にんじん、モロヘイヤ他)、リコピン(トマト他)、アスタキサンチン(さけ他)などが骨代謝を促進。
【運動】「かかと落とし」で骨細胞を活性化
骨は適度な重力をかけると強くなります。
これは、骨に衝撃を与えると、壊れる危険を骨細胞(骨代謝の司令塔)が察知し、骨芽細胞に骨を作るよう指令を出すためです。
(1)両足をそろえてまっすぐ立ち、かかとを上げてつま先立ちをする。不安定な場合はいすの背などにつかまってもOK 。
(2) かかとを一気にストンと落とす。少し頭に響くくらいに行うと、骨に適度な衝撃が加わります。
(3)(1)と(2)を2秒に1回のペースで50回繰り返す。
骨粗鬆症は治る時代に!
最近の骨粗鬆症の治療薬は、骨折の予防だけでなく、骨量の回復が望めることが分かっています。
食事や運動と併せ、取り入れることが大切です。
主な治療薬
骨を壊す働き(骨吸収)を抑える薬
ビスホスホネート
治療に広く使用される薬。飲み薬、点滴注射薬などさまざまある。
デノスマブ
皮下注射薬で高い効果が認められている。6カ月に1回の皮下注射でOK 。
骨を作る働き(骨形成)を増やす薬
テリパラチド
骨形成促進剤の第1号。副甲状腺ホルモン薬で、生涯で2年間のみ使用でき、皮下注射で自己注射も可能。その後も骨吸収抑制剤を追加使用する。
骨の吸収抑制・形成促進の作用を持つ薬
ロモソズマブ
2019年発売の新薬。骨形成促進と骨吸収抑制の作用を併せ持つ初の薬。月1回の皮下注射で1年のみ使用可。その後、デノスマブを追加使用する。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/落合 恵