自粛生活が続く中、筋肉量の減少やうつ、認知機能の低下が増えています。やはり、若さの秘訣は血管力と筋力! そこで今回は、八尾市保健所 健康まちづくり 科学センター 総長の北村明彦(きたむら・あきひこ)先生に「血管力&筋力若返り習慣」についてお聞きしました。
若々しさの秘訣は血管の健康と筋力維持
コロナ禍で、私たちの生活はさまざまに変化しました。
「家に閉じこもりがち」「体力が衰えた」「人と会う機会が減った」といった声も多く寄せられています。
生活の変化で心配されるのは、要介護の手前といわれるフレイル(※)です。
「活動量の減少は、筋力の低下や食欲不振、認知機能の低下など、フレイルへとつながる悪循環をもたらします。筋力の維持と血管の健康に努めてください」と、北村明彦先生。
早速、若返り術をはじめましょう。
※体や脳の衰えにより、要介護になるリスクが高い状態。
自粛生活で急増中 2つの"老化"
(1)血管力の低下で心血管病のリスク増
研究では、フレイルの人はフレイルでない人の約5倍も心臓病や脳卒中など循環器疾患での死亡率が高く、要介護状態になる率も約3倍高いことが分かっています。
「心臓病、脳卒中など循環器系の病気のリスクは、フレイルによって高まります」と、北村先生。
血管に動脈硬化が起こると、血管は狭く、硬くなります。
すると、何かのきっかけで血流の勢いが増して血圧が上昇し、病気を引き起こすように。
また、筋肉のポンプ機能が低下し、血液の循環が悪くなることも一因に。
「動かない生活が高血圧や糖尿病を悪化させます。こまめに動くことで筋力を維持し、血管を健康に保てます」
北村先生おすすめ
血管力&筋力若返り習慣
大股歩き+たんぱく質
足腰の力を強くするには、いつもより歩幅を半歩広くした大股歩きを意識。ゆっくりでいいので、地面を踏みしめるつもりで歩きましょう。また、筋肉の材料となるたんぱく質を毎食しっかり摂ることも大切。肉、魚、卵、大豆加工品などをバランスよく組み合わせて食べましょう。
とにかく動けばOK
運動が苦手な人は、生活の中でちょこちょこ動きましょう。買い物に行き、荷物を持って歩けば下肢はもちろん握力アップにも。ひざが痛くない人は階段や坂道を一歩一歩踏みしめて上がるのも効果的。家の中では、足踏みするのもいい。
動く前に伸びる
急な運動は筋肉や腱を痛めてしまうことがあります。まずは体を伸ばすことを意識しましょう。しっかり体を伸ばしてから、きつくない程度のスクワットなど筋肉トレーニングをすると筋力維持に役立ちます。無理せず続けることがポイント。
(2)筋力の低下で全身の老化が加速
「サルコペニア(※)は年齢とともに増え、80歳以上では女性の約半数が該当します」と、北村先生。
研究では、サルコペニアの人はそうでない人に比べ、要介護や死亡のリスクが約2倍高まることも分かっています。
筋力の低下はフレイル(要介護寸前の状態)になる大きな原因。
しかし、筋力維持に努めることで、逆戻りも可能です。
※筋肉量や筋力が一定以上に減少した状態。
サルコペニアの要介護発生リスク(女性)
東京都健康長寿医療センター研究所北村明彦先生らの研究グループの発表より。日本人の一般高齢者1851人を対象に約6年間の追跡調査を実施。
うつ、認知機能の低下も増える
サルコペニアの人はそうでない人に比べ、「身体活動が少ない」「血液中のアルブミン濃度が低い」などの他、特に女性に「うつ症状」や「認知機能の低下」が多いそうです。
「気力が衰えることで食事がおろそかになって低栄養になったり、認知機能の低下を招くことも。趣味などの楽しみを見つけることも大切です」(北村先生)
筋力の低下をチェック
下記の項目のうち、一つでも思い当たるものがあれば筋力が低下しています。
□横断歩道を渡り切れない
□ペットボトルのキャップが開けにくい
□手すりにつかまらないと、階段が上れない
サルコペニアをチェック
両手の親指と人さし指で輪っかを作り、利き足ではない方のふくらはぎのいちばん太い部分を力を入れずに軽く囲みます。
ふくらはぎの最も太いところを指で囲むと?
「囲めない」「ちょうど囲める」人
→筋肉量は足りている可能性が高いです。
「すき間ができる」人
→ 筋肉量が少なくなった状態である
サルコペニアの可能性あり。
出典:東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢「フレイル予防ハンドブック」より
(Tanaka T, Iijima K. G eriatr G erontol Int 2018年)
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/楠木雪野